2018年8月以降、コンゴ民主共和国で流行しているエボラ出血熱について解説します。

問1:エボラ出血熱とはどのような病気ですか?
問2:どのようにしてエボラウイルスに感染するのですか?
問3:エボラ出血熱はどこで発生していますか?
問4:日本はどのような水際対策を行っていますか?
問5:万一、日本国内でエボラ出血熱の患者が発生した場合、どのような対応が取られるのですか?
問6:エボラ出血熱が日本国内で発生する可能性はありますか?
問7:アフリカの発生国を旅行しても安全でしょうか?


問1 エボラ出血熱とはどのような病気ですか?

答  エボラ出血熱は、エボラウイルスによる感染症です。エボラウイルスに感染すると、2~21日(通常は7~10日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛等の症状を呈します。次いで、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れます。現在、エボラ出血熱に対する根本的な治療法はないため、患者の症状に応じた治療(対症療法)を行うことになります。

問2 どのようにしてエボラウイルスに感染するのですか?

答  エボラ出血熱の患者(エボラウイルスに感染し、症状が出ている者)の体液等(血液、分泌物、吐物・排泄物)やその体液等に汚染された物質(注射針など)に触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。一般的に、症状のない患者からの感染や、空気感染はしません。

 また、流行地では、エボラウイルスに感染した野生動物(オオコウモリ(果実を餌とする大型のコウモリ)、サル、アンテロープ(ウシ科の動物)等)の死体やその生肉(ブッシュミート)に直接触れた人がエボラウイルスに感染することで、自然界から人間社会にエボラウイルスが持ち込まれていると考えられています。

 なお、WHO(世界保健機関)は、流行地でエボラ出血熱に感染するリスクが高い集団を、
・ 医療従事者
・ 患者の家族・近親者
・ 埋葬時の儀式の一環として遺体に直接触れる参列者
としています。

 エボラ出血熱は、咳やくしゃみを介してヒトからヒトに感染するインフルエンザ等の疾患とは異なり、簡単にヒトからヒトに伝播する病気ではありません。病気に関する知識を持ち、しっかりした対策を行うことで感染を防ぐことができます。

問3 エボラ出血熱はどこで発生していますか?

答  1970年代以降、中央アフリカ諸国(コンゴ民主共和国、スーダン、コンゴ共和国、ウガンダ、ガボン等)で、しばしば流行が確認されています。2014年の西アフリカでの流行で初めて、アフリカ大陸以外(スペイン、米国、イタリア、英国)での発生が確認されました。

 また、2018年8月1日から現在に至るまで、コンゴ民主共和国の北キブ州およびイツリ州においてエボラ出血熱のアウトブレイクが続いており、2019年6月11日には隣国のウガンダ共和国のカセセ県でも患者が確認されました。同年7月18日(日本時間)には、北キブ州の州都ゴマにも感染が及んだことを受けてWHOは、この事態が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言しました。さらに、WHOは、非公式な情報としつつも、同年9月にタンザニア最大の都市ダルエスサラームでエボラ出血熱の疑いのある患者が発生したとの情報を受け取ったと発表しました。

 なお、流行状況に関する最新の情報は、WHO(世界保健機関)の Disease Outbreak Newsのサイト(英語)(http://www.who.int/csr/don/en/)でみることができます。

参考:過去のエボラ出血熱の発生状況
※最近の動向については、「海外へ渡航される皆様へ」に掲載されている「海外における一類感染症等の発生状況」をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou-_iryou/kenkou/kekkakukansenshou18/index_00003.html
(出典:WHO, *は米国CDC)

問4 日本はどのような水際対策を行っていますか?

答  検疫所のホームページや空港等におけるポスターの掲示を通じて、アフリカの流行国への渡航者や帰国者に対する注意喚起を行っています。また、帰国者に対しては、空港で日頃から実施しているサーモグラフィーによる体温測定を実施しています。

 WHOによるPHEIC宣言(問3参照)も踏まえ、現在、各検疫所を通じて、発生地域であるコンゴ民主共和国への渡航者に対するより一層の注意喚起や、帰国者及び入国者に対する自己申告の呼びかけ等を空港などで行っています。また、各航空会社に対して流行国に21日以内に滞在した乗客は自己申告するようお願いする旨の機内アナウンス協力を依頼しています。流行国からの帰国・入国者には、サーモグラフィーによる体温測定に加え、検疫所から定期的に健康状態を確認する健康監視を実施しています。

 万一、流行国からの帰国者でエボラウイルスへの感染が疑われる方がいた場合、早急に感染症指定医療機関に搬送し、治療及び感染拡大防止といった対策を取れるよう、体制が整備されています。

参考1:エボラ出血熱について「4 検疫所向けの情報」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708.html

参考2:感染症指定医療機関の指定状況(平成31年3月29日現在)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02.html

問5 万一、日本国内でエボラ出血熱の患者が発生した場合、どのような対応が取られるのですか?

答 エボラ出血熱は、感染症法において、マールブルグ病やラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペストなどの感染症とともに、一類感染症に指定されています。

 流行地域からの帰国者で、一類感染症に感染した疑いのある人について医療機関等から連絡があった場合、国立感染症研究所で迅速に検査を行い、感染の有無を確認する体制が整備されています。検査の結果、感染していることが明らかになれば、患者は感染症指定医療機関に移送され、感染防御対策の施された病室において適切な医療が公費により提供されることになります。

問6 エボラ出血熱が日本国内で発生する可能性はありますか?

答  エボラ出血熱は、インフルエンザなどとは異なり、主として患者に直接接触することにより感染すること(問2)、流行地域はアフリカに限定されていること(問3)から、現時点では国内で発生するリスクは低いと考えられます。しかしながら、2014年に欧米諸国で感染事例が確認されたとおり、国内で患者が発生する可能性はゼロではなく、国内での発生に備えて体制が整えられています。

問7 アフリカの発生国を旅行しても安全でしょうか?

答  現在、日本の外務省は、エボラ出血熱の発生状況について、コンゴ民主共和国における感染症危険情報を発出し、不要不急の渡航をやめるなどの注意喚起を行っており、流行地域である北キブ州及びイツリ州には退避勧告が発出されておりますので、その指示に従ってください。

 また、発生地域であるコンゴ民主共和国から帰国した方は、必ず検疫所に申告してください。加えて、エボラ出血熱に限らず、帰国時に症状がある場合は必ず検疫所に申告してください。帰国時に症状がない場合でも、遅れて発症する場合があります。日本にはない病気を検出・診断できる検査・医療機関は限られていますので、帰国後に必要な方は最寄りの検疫所にご相談ください。

参考:厚生労働省検疫所ホームページ https://www.forth.go.jp/
参考:外務省 海外安全情報ホームページ http://www.anzen.mofa.go.jp/
出典:厚生労働省ホームページ「エボラ出血熱に関するQ&A」(令和元年9月25日作成 第10版)」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000550660.pdf