急性灰白髄炎(ポリオ、小児麻痺)とは
2020年12月23日更新
 
 
経験談のご協力をお願いします。
※皆様からご投稿いただきました感染症経験談は、研究活動の研究報告として提出予定です。※提出する情報には個人情報は含まれません。

概要

 ポリオはポリオウイルスが脊髄神経前角の運動神経核を侵すことで四肢を中心とする全身の筋肉の運動障害、いわゆる弛緩性麻痺(だらりとした麻痺)を起こす急性ウイルス感染症です。かつて小児に多発したために小児麻痺と呼ばれましたが、免疫抗体をもたなければどの年代にも感染します。

感染経路

 おもに感染者の腸管から排泄される糞便中のウイルスが、手、指などを介し接触者の口に運ばれることでヒトからヒトへの感染が起こります。発病の早期では咽頭粘液からの飛沫感染も起こることがあります。潜伏期間は通常7~14日とされ、伝染期間は発症の数日前後に最も強くなりますが、便からのウイルス排出は発病の3~6週後まで続きます。媒介する動物はなく、人間以外の感染や保菌動物もいません。

症状

 感染者の90%以上は全く無症状の不顕性感染(感染していながら 臨床的に確認しうる症状を示さず健康にみえる状態)で終わります。5%程度が発熱や頭痛などの感冒様症状で終わり、髄膜刺激症状を伴う無菌性髄膜炎は1%程度ですが、麻痺は伴いません。麻痺型のポリオは全体の感染の1%以下で、数日の発熱に伴って背部痛と頸部硬直を主とした髄膜炎症状が現れ、数日以内に“だらりと動かない”急性の弛緩性麻痺が四肢を中心に出現します。急性期は炎症性に比較的広範囲な脊髄領域が侵されることが多いものの、解熱した後は麻痺の進行は一般的にありません。麻痺はおもに非対称で、四肢の筋肉が主ですが、腹筋、胸筋、背筋、頸筋、顔面菌にも現れます。場合によっては横断性脊髄炎と同様の尿失禁もあります。麻痺は生涯にわたって残ることとなります。

治療・予防

 ポリオに有効な治療法はありませんが、ワクチン接種によってポリオウイルスの感染を予防することができます。ポリオワクチンには経口の生ワクチンと、注射による不活化ワクチンの2種類があります。日本では不活化ポリオワクチンを、初回接種3回(標準的には生後3か月から12か月に3回で、20日からから56日までの間隔をおく)、追加接種1回(初回接種から12か月から18か月後(最低6か月後))に1回、合計4回の接種することが推奨されています。

※DPTワクチンは、2018年1月29日から再び使用可能となりました。

※生ポリオワクチン(OPV)2回接種者は、ポリオ流行国渡航前を除き、IPVの接種は不要。OPV1回接種者はIPV3回接種。OPV未接種者はIPV4回接種。

参考資料として
・「最新感染症ガイドR‐Book 2012」-日本小児医事出版社 2013年10月発行(編集:米国小児科学会、監修:岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長)
・国立感染症研究所「日本の定期/任意予防接種スケジュール」(2020年10月1日現在)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/schedule.html
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2014/10

関連記事


RECOMMEND