【感染症ニュース】パラインフルエンザとは何? 施設などで集団感染した事例も
2021年11月12日更新
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びせいぶつ芸能社
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 「パラインフルエンザ」という感染症をご存知でしょうか?

 感染した場合には、上気道炎など呼吸器系に症状があらわれ、ぜん息悪化の原因となります。

 一方で、聞きなれない方も多い感染症と思います。

 国立感染症研究所が公表している調査報告によると、2021年の6月には宮城県の保育施設で集団感染も確認されるなど、お子さんをお持ちの方にとっては、実は身近な感染症でもあります。

 また、「インフルエンザ」との言葉が入っていますが、関係はあるのでしょうか。

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に「パラインフルエンザ」について、取材しました。

「インフルエンザ」とは違う?医師が見た施設での集団感染

 (安井医師)パラインフルエンザは、昔からある風邪のウイルスの一種です。「パラインフルエンザ」という名前を聞いて、インフルエンザと同じような種類の感染症と思われるかもしれませんが、インフルエンザではありません。インフルエンザとは違い、髄膜炎を起こすことはありません。

 感染し、発症すると上気道炎を起こしますが、ほとんど重症化はしないとされています。まれに細菌感染により、肺炎を起こすことがあります。

 私が診断した事例では、東日本大震災の時に、障がい者施設の方々が避難した先で集団感染が起きていたことがありました。非常事態で、すぐに環境を整えることができない状態ではありましたが、密な環境で寝泊まりしていたため、集団感染が起こりやすい状況であったと考えられます。

 パラインフルエンザは、飛沫感染と接触感染がおもな感染経路です。

 先ほどの事例では、障がい者の方々は、日頃から施設内を積極的に動いたり、話したりすることはないようでした。実際に接触しているのは、主に職員の方々であったことから、職員のマスク着用と手指衛生の徹底をしてもらったところ、感染がおさまりました。

 パラインフルエンザに有効とされる治療薬はまだありません。飛沫感染や接触感染を防ぐために咳エチケット、マスクの着用、手指衛生に気を配りましょう。かかってしまった場合は、まず休息をとるようにつとめてください。

 また、保育施設でも、保育士などの職員が媒介し、子どもが感染する場合もあります。

パラインフルエンザとは

 パラインフルエンザとはどのような感染症なのでしょうか。

・病原体 パラインフルエンザウイルスで 1、2、3、4A、4B型がある。
・潜伏期間 2-6日
・感染経路 接触感染、飛沫感染
・感染期間 症状が出現する1週間前から症状消失後 1-3週くらいまでウイルスを排せつする。
・症状 クループ、上気道炎、肺炎、細気管支炎。喘息の悪化原因ともなりうる。
・好発年齢 全ての年齢で生じうるが、通常5歳までに複数回、感染する。
・診断法 症状とほかの感染症の除外で診断する。
・治療法 有効な治療薬はなく、対症療法が行われる。
・予防法 飛沫感染、接触感染として一般の予防方法を励行する。
・登校(園)基準 咳などが安定した後、全身状態のよい者は登校(園)可能であるが、手洗いを励行する。

宮城県の保育施設での報告事例

 2021年6月に、宮城県内の保育施設において、パラインフルエンザが原因の集団感染が発生しました。

 発熱、咳、鼻水といった症状が出ており、当初はRSウイルス、新型コロナウイルスなどの検査を受けましたが、いずれも陰性でした。その後、保健所などを通して、さらに詳しい検査が行われたところ、パラインフルエンザ3型が検出されました。

学校では

 日本小児科学会によると、パラインフルエンザは、学校で流行が起こった場合にその流行を防ぐため、 必要があれば、校長が学校医の意見を聞き、第三種の感染症としての措置をとることができる疾患としています。

 保育施設や学校など集団生活を行う場では、子ども同士で感染が広がるおそれもあります。パラインフルエンザは飛沫感染や接触感染により、感染します。マスクの着用や、咳エチケット、石けんを用いた手洗いをこまめに行うようにしましょう。

引用:国立感染症研究所IASR「保育施設におけるヒトパラインフルエンザウイルス3型による集団感染事例」
日本小児科学会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」(2021年6月改訂版)
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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