【感染症ニュース】梅毒 国内で20代女性に感染ひろがる 関東は注意 特に気をつけてほしいのは
2021年11月17日更新
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びせいぶつ芸能社(トレパ)
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 国内での梅毒の感染者数の報告が増えています。

 国立感染症研究所によると、全国の報告数は第42週(10/18~24)で、128例です。

 今年に入ってからの全国の報告数は、6,233例となっています。

 また、2021年4月7日に発表された調査報告では、東京都で481人の感染報告があり、全国でも、特に突出した数となっています。関東周辺でも、広がりをみせており注意が必要です。

 これまでは、海外から持ち込まれるケースが多いとされてきました。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外との往来が少なくなった現在も国内でひろがり、今年は、過去最高の感染者数を更新する見込みです。

 どのようなことに気を付ければいいか、感染症専門医・大阪府済生会中津病院の安井良則医師に取材しました。

梅毒とは

 (安井医師)梅毒は、らせん状菌である梅毒トレポネーマを病原とする性感染症です。

 15世紀末に歴史上に出現し、かつては日本を含めて世界中に広くまん延していました。

 その後、20世紀に入りイギリスのアレクサンダー・フレミングによるペニシリンの発見と、治療応用によって梅毒は激減していきました。

 梅毒トレポネーマは低酸素状態でしか生存できないため、感染経路は限定されます。

症状

 感染したあと、経過した期間によって、症状の出現する場所や内容が異なります。

<第Ⅰ期:感染後約3週間>
 初期には、感染がおきた部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)にしこりができることがあります。

 また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。痛みがないことも多く、治療をしなくても症状は自然に軽快します。

 しかし、体内から病原体がいなくなったわけではなく、他の人にうつす可能性もあります。

 感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒の検査が勧められます。

<第Ⅱ期:感染後数か月>
 治療をしないで3か月以上を経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹が出ることがあります。

 小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」とよばれています。発疹は治療をしなくても数週間以内に消える場合があり、また、再発を繰り返すこともあります。

 しかし、抗菌薬で治療しない限り、病原菌である梅毒トレポネーマは体内に残っており、梅毒が治ったわけではありません。

 アレルギー、風しん、麻しん等に間違えられることもあります。

 この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器の障害につながることがあります。

<晩期顕性梅毒(感染後数年)>
 感染後、数年を経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。

 また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。

 現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、晩期顕性梅毒に進行することはほとんどありません。

 また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります(先天梅毒)。

特に気をつけて欲しいのは…

 大部分は第Ⅰ期または第Ⅱ期の排菌している感染者との粘膜の接触を伴う性行為や、疑似性行為によって感染するほか、感染した妊婦の胎盤を通じて感染する経胎盤感染があり、先天梅毒の原因となっています。

 気がかりなのは、近年再び梅毒の患者数が若年者層を中心に増加してきていることです。

 特に20代の女性の間で広がりを見せていますが、「性産業」に従事する方、されたことがある方は感染のリスクがあり、注意が必要です。

 梅毒による症状が出た場合でも、発疹は数週間程度で消えます。

 しかし、体内に病原体は残っているため、治療しなければパートナーを感染させてしまうおそれがあります。

 診断して、早期に治療を行えばなおる病気です。一方で、晩期になると治療が難しいケースもあります。

 性感染症ということで、検査をためらう方もいらっしゃいます。

 感染を広げないためにも、性産業に従事された経験のある方やサービスを利用された方の中で、気になる症状があった場合は、必ず検査を受けてください。

◇感染症・予防接種ナビでは、みなさまからの梅毒の経験談を募集しています。

引用:厚生労働省「梅毒に関するQ&A」
国立感染症研究所「日本の梅毒症例の動向について」(2021年4月7日)
取材:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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