​ ​ 【感染症ニュース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 症状ある人の約80%が軽症 国をあげた感染予防策は重症患者へ十分な医療を届けるために必要
【感染症ニュース】新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 症状ある人の約80%が軽症 国をあげた感染予防策は重症患者へ十分な医療を届けるために必要
2020年3月11日更新
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国立感染症研究所で分離された <br /> 新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真  (提供元:国立感染症研究所)
国立感染症研究所で分離された
 新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真  (提供元:国立感染症研究所)
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 内閣官房新型インフルエンザ等対策室のWebサイトによると、2020年3月9日現在、患者発生数は中国国内で80,735人、全世界で107,758人、日本国内では487人となっており、中国を除く国での患者数が2万人を超えて、世界中で患者数が増加しつつあります。日本国内でも多くの都道府県で患者の発生が見られており、一部の地域ではクラスター(集団発生)が認められています。専門家会議によると、密閉空間に人が密集した状態で、たくさんの人が歌ったり盛んに会話をしたり叫んだりする環境が、クラスターが発生しやすいという情報が出されています。現在、日本国内において、新型コロナウイルス陽性と判定・診断された方は、その多くが軽症例、または無症状であると言われています。そのような方々が感染症指定医療機関などに長期間にわたって入院していると、重症の患者が入院して十分な治療を受けられなくなるという恐れが出てきています。今後さらに患者数が増えてきた場合は、日本国内の医療の体制を保持したまま、高齢者や持病を持った方等が中心される重症例の患者を中心に、しっかりと治療する医療体制に変更していく必要があると言われつつあります。そのためには、短期間に爆発的に患者発生数が増加する事態だけは避ける必要があります。いま、専門家会議の勧告等に従い、クラスターが発生しやすいイベントなどへの参加の自粛や、学校の一斉休校など多くの国民に負担のかかる感染予防策が国をあげて行われていますが、これらは医療体制の崩壊という最悪の事態をできる限り回避し、これから増加してくる発病者の中で“助けられる命をできる限り助けていきたい"という大きな基本方針にのっとっています。

 新型コロナウイルス感染症について、大切なことをまとめました。

 1.感染拡大を阻止すること

 2.自分がかからないよう予防すること

 3.正しい情報を正しく理解すること

 それぞれについて、詳しく解説します。

1.感染拡大を阻止するには

 感染拡大を阻止するには、国民ひとりひとりの協力が不可欠です。

●感染しやすい場所の特徴を理解し避ける
 これまで集団感染が確認された場所に共通するのは、

 (1)換気の悪い密閉空間

 (2)多くの人が密集していた

 (3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた

 という3つの条件が同時に重なった場所です。こうした場所ではより多くの人が感染していたと考えられます。これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面をできるだけ予測し、避ける行動をとりましょう。

●重症化した患者への適切な医療のため 医療体制の崩壊をさせない
 新型コロナウイルス感染症に感染し発病した場合、大半の例では軽症または中等症までで治っていくと言われています。一方、高齢の方や、糖尿病や呼吸器疾患などの基礎疾患を持った方々は、重症化する場合があると言われています。最も重要なのは、“重症化する可能性のある方々"ができる限り感染しないような環境を作り、万が一感染・発病した場合は、すぐに適切な医療が受けられるようにすることです。

 これが大切な理由は、日本国内における新型コロナウイルス感染症の流行を抑制し、たとえ流行が抑えられなくなっても、流行の開始・ピークを少しでも遅らせなければならないからです。こうした理解がないままでいると、医療機関に患者が殺到して地域の医療体制が崩壊し、重症者に十分な医療が行き届かなくなることによって、亡くなってしまう人が増加してしまいかねません。

●感染を広げないための行動を心がける
 自分が発熱や呼吸器症状をきたしている場合は、たとえ症状が比較的軽度であっても、職場や学校など長時間にわたって特定の人と接する場所に行くことをやめ、自宅で休むことを心がけてください。特に、10~30代の若い年齢の方々は、行動範囲が広く、症状に乏しく、自覚することなく周囲の人へ感染を広げてしまう可能性があります。たとえ風邪のような症状だけであっても、不特定多数の人が集まるようなイベント・場所・屋内施設などに行くことはできる限り自粛するようお願いします。
 
 厚生労働省のホームページの「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」によると、新型コロナウイルスに感染している疑いがある場合は、帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。その際、必要があると認められた場合は、専門の医療機関(帰国者・接触者外来)が紹介されます。
また、複数の医療機関を受診することは控えましょう。

 医療機関を受診する際には、マスクを着用するほか、手洗いや咳エチケット(咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえる)を徹底しましょう。

2.自分が感染しないために

 コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。

 手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
また、できる限り混雑した場所を避けること、十分な睡眠をとることも重要です。

3.正しい情報を発信している人を見つけておく

 ネット上をはじめとして、多くのメディアで情報があふれていますが、どの情報が正しいかを見極めることはとても大切です。

 情報に接した際、その情報は誰が発したものか、出典を必ず確認しましょう。そして、たとえ医者が発言・執筆した内容でも、感染症の専門医でなければ、正しいとは限りません。感染症の専門医や公的な研究機関、厚生労働省などの公的情報を参考にしましょう。「テレビに出てる人が言っていた」、「SNSに書いてあった」というだけで、鵜呑みにするのは危険です。

 また、物資が不足しているなどといった感染症に直接かかわらない情報も、正しいものかをきちんと判断することは大切です。トイレットペーパーやティッシュペーパーが不足している情報がありましたが、厚生労働省が「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」の中で、“通常どおりの生産・供給が行われており、今後とも不足する懸念はない"と回答し、日本家庭紙工業会のリリースを掲載しています。むやみに買い占めなどを行うことで、必要な方に物資が届かないといったことが起きるなど、悪循環を生みだしてしまいます。

 過度に心配しパニックになることなく、情報を正しく理解し、自身の感染予防と万が一の際の適切な行動につなげることが、いま最も大切です。

 なお、このサイト、感染症・予防接種ナビ は、感染症の専門家の監修・取材協力により、正しく信頼できる情報発信を目指して運営しています。

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議

■参考リンク:首相官邸新型コロナウイルス感染症に備えて~一人ひとりができる対策を知っておこう~

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルスを防ぐには(2020年2月25日改訂版)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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