問35 SFTSウイルスに感染したネコの事例の詳細について教えてください。

答 国内最初の症例ではSFTSの流行地の飼育ネコ(室内・野外両飼育)が、発熱、消化器症状(食欲不振等)を呈しました。検査所見では、血小板減少(1万/mm3未満)、白血球減少、血清酵素異常(CPKの上昇)などが見られました。血液及び直腸スワブからSFTSウイルスが分離されました。入院2週で回復して4週後にウイルス陰性を確認後退院しています。回復期にむけて抗体が上昇しました。このネコへのSFTSウイルスの感染様式は不明です。なお、このネコから飼い主や獣医療関係者へのSFTSウイルスの感染拡大は確認されていません。ネコの入院中の取扱はPPE(手袋・防護衣等)により感染予防措置をとり、汚物などは次亜塩素酸ナトリウム含有消毒剤により消毒しています。2019年には年間109件の発生が報告され、致命率は約70%でした。

問36 ネコやイヌでどのような来歴・症状などがあれば、SFTSウイルス感染を疑うのですか。また確定診断はどのように行うのですか。

答 これまでの知見から、発熱(39℃以上)、食欲不振等の症状や白血球減少症(5000/ mm3以下)、血小板減少症(10万/ mm3以下)が認められ、さらに入院を要するほど重症(自力採餌困難等)の場合には、既存の細菌・原虫・ウイルス(パルボウイルスなど)による感染症に加えてSFTSであることも疑われます。臨床症状や血液検査等だけではSFTSの確定診断はできません。そのためウイルス学的検査を実施することが必要です。急性期には、血清からウイルス遺伝子の検出を行い、回復期には抗体検査を行います。(国立感染症研究所info@niid.go.jpにお問い合わせください。)

問37 SFTSウイルスに感染し発症したネコを取扱う際の感染予防措置など注意点はありますか?獣医師が取るべき予防策は?

答 発症したネコの血液、唾液、便、尿を含めた体液には感染性のあるウイルスが検出されています。そのため体液や排泄物を処理する際には次亜塩素酸ナトリウム含有消毒剤による処理やオートクレーブなどの加熱滅菌処理を行うことが必要です。患畜の取扱にはPPEを必ず適切に着用してください。また、診察台等は消毒用アルコールや次亜塩素酸ナトリウム含有消毒剤などで必ず消毒するようにして下さい。

問38 ネコの飼育者が注意すべきことは?

答 日常的な対策としては、ネコの飼育者に対するダニの駆除剤等の投与についての指導を徹底して下さい。飼育者には、ネコの健康状態の変化に注意し、体調不良の際には動物病院を受診することを勧奨して下さい。万一、飼育しているネコがSFTSと診断され、飼育者が発熱、消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛等の症状(問24参照)がでたら、医療機関を迅速に受診し、かつ、飼育ネコがSFTSを発症したことを医師に説明するように指導して下さい。

問39 ネコ以外の伴侶動物は発症しますか?

答 これまでに国内でSFTSを発症したイヌの症例が確認されています。雑種4歳(避妊メス)、元気消失、食欲廃絶を主訴とし、発熱、CRP上昇(7mg/dl)、白血球減少(1700/ mm3)、血小板減少症(14万/ mm3)、GPTとALP 上昇、溶血、軟便から血便等を呈し、ネコのSFTSと類似した症状を示しましたが、最終的には回復しました。急性期にウイルス血症、その後、IgM抗体、IgG抗体が検出されています。多くのイヌはSFTSウイルスに感染しても、症状を呈することがない、いわゆる不顕性感染である場合が多いと考えられていますが、一部が発症する可能性があります。イヌにおいてSFTSが疑われる症状が認められた場合は、ウイルス学的な検査が必要です。(国立感染症研究所info@niid.go.jpにお問い合わせください。)

出典:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(第6版 令和2年7月21日作成)」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html