問16 ジカウイルス病の病原体は何ですか?

答 フラビウイルス科フラビウイルス属に属するジカウイルスです。

問17 潜伏期間はどのくらいですか?

答 2 ~12日(多くは2~7日)と言われています。

問18 どのような症状が出ますか?

答 主として軽度の発熱、斑丘疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、疲労感、倦怠感、頭痛などを呈します。これらの症状は軽く、 2 ~ 7 日続いて治まります。血小板減少などが認められることもありますが、他の蚊媒介感染症であるデング熱やチクングニア熱より軽症と言われています。

 これまでの研究結果から、WHOや米国CDCは、ジカウイルス感染が小頭症の原因となること、また、WHOはジカウイルス感染がギラン・バレー症候群の原因になることについて科学的同意が得られたと結論づけました。

問19 検査はどのように行うのですか?

答 特異的な臨床症状・検査所見が乏しいことから、診断のための検査は、血液または尿からのウイルス分離または PCR 法による病原体遺伝子の検出により行います。血清学的検査による診断は、IgM抗体または中和試験による抗体の検出により行います。

 なお、IgM抗体を用いて診断を行う場合は、患者が感染したと考えられる地域で流行中のその他のフラビウイルス属ウイルス(デング熱、黄熱、ウエストナイル熱、日本脳炎等)による先行感染又は共感染がないこと、半年以内の黄熱ワクチンの接種歴がないことを確認してください。

 その他のフラビウイルス属ウイルスによる先行感染又は共感染を認める場合は、ペア血清によるIgM抗体以外の方法による確認試験を実施してください。

問20 鑑別を要する疾患は何ですか?

答 同じ蚊媒介感染症であるデング熱及びチクングニア熱との鑑別が必要です。その他、チフス、マラリア、レプトスピラ症などとの鑑別も必要です。

問21 治療法はありますか?

答 対症療法となります。通常は比較的症状が軽く、特別な治療を必要としません。

問22 患者の経過と予後はどうでしょうか?

答 ジカウイルス病の予後は比較的良好です。症状が悪化した場合は医療機関を受診してください。死亡はまれです。

問23 感染症法上の取り扱いはどうなっていますか?

答 平成 28 年 2 月 5 日に感染症法の四類感染症、検疫法の検疫感染症に追加され、同年 2 月 15 日に施行されました。これにより医師による保健所への届出が義務となり、検疫所での診察・検査、汚染場所の消毒等措置が可能となりました。

問24 ヒトスジシマカについて教えてください。

答 ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域(本州以南)に分布しています。その活動時期は 5 月中旬~ 10 月下旬です(南西諸島や温暖な地域ではこれよりも活動期は長い)。

 ヒトスジシマカの幼虫は、例えば、ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルに溜まった水、放置されたブルーシートや 古タイヤに溜まった水などによく発生します。

 人がよく刺されるのは、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などとされています。

(参考)
国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページ
ヒトスジシマカの写真

問25 ヒトスジシマカの体内でジカウイルスは増えますか?

答 ヒトスジシマカの体内でウイルスが増えることが確認されています。そのため、ヒトスジシマカの刺咬によりジカウイルスが伝播される可能性があると言えます。

問26 ヒトスジシマカは越冬しますか?

答  ヒトスジシマカの成虫は、秋になって気温が下がると死んでしまい、卵の状態で冬を越します(卵越冬)。

問27 ネッタイシマカについて教えてください。

答 現在、ネッタイシマカは国内には生息していません。かつては国内でも沖縄や小笠原諸島に生息し、熊本県牛深町には 1944 ~ 1947 年に一時的に生息していたことが記録されていますが、 1955 年以降は国内から消滅したとされています。ただ今日では、航空機によって国内に運ばれる例も確認されており、定着の可能性は皆無ではありません。

(参考)
国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページ
ネッタイシマカの写真

問28 ネッタイシマカは国内に定着できますか?

答 ネッタイシマカの分布の北限は台湾の高雄市周辺とされています。従って、国内では沖縄県の南方(石垣島・西表島など)以北の野外では定着できないと考えられます。しかし、空港ターミナルなど、一定の温度が維持されているような特別な場所では定着できるかもしれません。

問29 蚊に刺されないようにするにはどうしたらよいでしょうか?

答 ヒトスジシマカは、早朝・日中・夕方(特に日没前後)に活動し、ヤブや木陰などでよく刺されます。その時間帯に屋外で活動する場合は、長袖・長ズボンの着用に留意し、忌避剤の使用も推奨します。 ネッタイシマカは屋内で活動しますので、屋内での服装や対策に留意しなければなりません。

問30 日本でジカウイルスに感染する可能性はありますか?

答 現在日本での流行はありません。しかし、仮に流行地域でウイルスに感染した発症期の人(日本人帰国者ないしは外国人旅行者)が国内で蚊にさされ、その蚊がたまたま他者を吸血した場合に、感染する可能性は低いながらもあり得ます。

問31 不顕性感染の患者から感染の可能性はありますか?

答 国立感染症研究所のリスクアセスメントによると、不顕性感染の患者が感染源となりうるかどうか(刺咬した蚊がウイルスを伝播しうるほどウイルスが増えるか、どのくらいの期間ウイルスが持続されるかなど)については、わかっていません。したがって、国内の蚊の活動期においては、ジカウイルス感染症流行地域からの帰国者は症状の有無にかかわらず忌避剤の使用など蚊に刺されないための対策を少なくとも 2週間程度は特に注意を払って行うことが推奨されます。また、問10にもあるとおり、流行地域に滞在中は症状の有無にかかわらず性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること、流行地域から帰国した男女は症状の有無にかかわらず少なくとも6か月、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際に、コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。

出典:厚生労働省 ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて (2016年12月14日更新)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109899.html