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※皆様からご投稿いただきました感染症経験談は、研究活動の研究報告として提出予定です。
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概要

 先進国、発展途上国を問わず、罹患率が高いのがロタウイルスです。ほとんどすべての子どもが4〜5歳までに感染します。初感染であれば新生児期を除いて不顕性感染(感染していながら臨床的に確認しうる症状を示さず健康にみえる状態)はまれです。生後6か月以降2歳未満の時期に感染するともっとも重症化しやすいといわれており、入院治療を必要とする乳幼児下痢症の35〜52%がロタウイルスによるものです。アメリカにおいて、ロタウイルスは年間数百万例以上の下痢症を引き起こし、約7万人の子どもが入院治療を必要とし、100例以上が死亡していると推計されています。

 好発年齢は乳幼児で、特に1歳児に多く、年齢が上がるにつれだんだんと減っていきます。脱水などのために入院治療が必要となるのはほとんどが就学前(6歳以下)の乳幼児で、2歳未満児(ただし、3か月以上)が過半数を占めます。生涯をとおしてロタウイルス感染は繰り返し起こりますが、一般に年長児や成人は不顕性感染となります。

 従来、12〜1月に流行し、冬季下痢症と呼ばれてきましたが、最近の日本での流行のピークは2〜4月となっています。初冬(11月〜1月)に流行するノロウイルス感染症と入れ替わるようにロタウイルスの流行がみられ、ウイルス性胃腸炎として二峰性のピークを示すことが最近の日本での流行の特徴です。

感染経路

 感染は糞口感染で、主な感染経路は間接接触もしくは直接接触による感染です。また、半数近くに気道症状がみられることや罹患率の高さから気道感染(飛沫感染)の可能性も考えられます。

 ロタウイルスは患児の糞便中に大量に含まれます。感染性のある期間(糞便中にウイルスの検出される期間)は通常、下痢発症2日前から発症後10日間くらいとされますが、重度の下痢の場合は25〜57日間検出され、免疫不全状態ではさらに長期に及びます。潜伏期はおよそ2日です。

症状

 嘔吐と下痢、発熱の3つが主な特徴です。特に乳幼児では3つともの症状がそろいやすく、脱水や代謝性アシドーシスをきたしやすくなります。

 典型例では病初期に嘔吐と発熱がみられ、続いて下痢が始まります。嘔吐は特徴的症状で、突然起こり、これを契機に医療機関を訪れるケースが多く見られます。通常、嘔吐は発症1〜2日目にみられ、3日目以降少なくなります。経過中の総嘔吐回数は乳幼児では5〜6回を超えることも多くあります。

 下痢は水様性から泥状です。患児の半数近くにみられる白色〜黄白色便は特徴的ですが、同様の色調はノロウイルス感染症についてもみられるため注意が必要です。腸重積の合併などがなければ、通常血便はみられません。

 発熱の持続は2日を超えることは少なく、多くが半日〜1日です。最高体温は40.2℃に達することもあり、39.1℃以上が14%に、38.0℃以上が65%にみられます。

 合併症として頻度が高いのは脱水と代謝性アシドーシスです。その他、電解質異常、低血糖、麻痺性イレウス、腸重積、蛋白漏出性胃腸症、筋炎、痙攣、脳炎、脳症などがみられますが、ロタウイルス感染との因果関係が明らかでないものもあります。

治療

 特異的な抗ウイルス療法はありません。対症療法が中心となり、嘔吐や下痢に伴う脱水や電解質異常に対して経口または経静脈的に補液が行われます。重症度により経口補液のみでよいか、輸液が必要であるかを判断します。一般的に、軽度の脱水には経口補液が中心となり、中等度以上(5%を超える体重減少)の脱水例は輸液を要することが多く、入院治療を考慮します。

 薬物療法としては、下痢に対して整腸薬(乳酸菌製剤など)が用いられます。下痢が長引き、二次性乳糖不耐症の疑われる乳児には乳糖分解酵素製剤が用いられます。

予後

 現在でも発展途上国を中心に年間約80万人の乳幼児がロタウイルス感染症による脱水で死亡しており、重症例には速やかな処置を必要としますが、日本を含めた先進国では死亡例は少なく、通常およそ1週間の経過で治癒します。しかし、原発性免疫不全症や骨髄移植後の子どもでは、いったん感染するとウイルスを排除できず致死的になることがあります。

予防

 現時点で有効な予防法はなく、4〜5歳までにほとんどの子どもが感染します。

 現状では、院内感染予防対策などにより感染の拡大を防ぐことが重要です。ロタウイルス感染症では間接接触による感染が多いことから、罹患児の隔離、感染源である糞便やおむつの適切な処理、衛生的手洗い(特に、母親と医療従事者)、汚染された衣服の次亜塩素酸消毒などが徹底される必要があります。

ワクチン

 現在ロタウイルスワクチンは、1価ロタウイルスワクチンと5価ロタウイルスワクチンの2種類が日本国内において認可されています。

■ロタウイルスワクチン
予防接種対象とスケジュール

ロタウイルスワクチン共通
Q.ロタウイルスに感染した幼児には免疫ができるでしょうか。
A.ロタウイルス胃腸炎は初感染時に重症化することが知られています。ロタウイルスに一度自然感染しても、その後の再感染を完全に予防できるわけではありませんが、下痢症状は徐々に軽症化します。ロタウイルスワクチンは、この性質を利用して初感染時の重症ロタウイルス胃腸炎を予防することを目的に開発されました。

Q.ロタウイルスワクチン接種前に、母乳を飲ませてもよいですか。
A.接種前後に授乳を制限する必要はありません。

Q.ロタウイルスワクチンを接種後、ワクチンウイルスは便中に排泄されますか。
A.接種後1週間程度は被接種者の便中に排泄されます。排泄されたウイルスによって周りのものが感染し、胃腸炎を発症する可能性は低いことが確認されていますが、2次感染はあり得るので、おむつ交換後等には、石けんで十分な手洗いをする等の注意は必要です。家庭内に免疫機能に異常を認めるものがいる場合等には、特に手洗いを徹底する等の注意が必要ですが、家庭内感染の予防という意味ではワクチン接種のメリットはあると思われます。

Q.ロタウイルスワクチンは他の胃腸炎にも有効ですか。
A.ロタウイルスワクチンは、ロタウイルス感染以外の原因による胃腸炎には無効です。

Q.ワクチン接種後に腸重積症を発症する心配はありませんか。
A.初回接種後に腸重積症のリスクが増加することが最近の海外での調査でわかってきています。一般に腸重積症は乳幼児後期に発症頻度が高くなりますので、初期接種は生後14週+6日までに接種することが大切です。米国では、生後15週+0日以降には、接種を開始しないという指導がなされています。
 ワクチン接種後、腸重積症を示唆する症状(腹痛、周期的に泣く、反復性の嘔吐、血便排泄、腹部膨満感)を呈した場合には、速やかに医師の診察を受けるよう、事前に被接種者の保護者に知らせておくことが大切です。その際、ワクチンを受けた日付を医療機関に伝えてもらうようにします。

Q.ロタウイルスワクチン接種後に吐いてしまったら、どうすればよいのですか。
A.1価ロタウイルスワクチンは、口から多少こぼれても、赤ちゃんの飲み込みが確認できれば再接種の必要はありません。万が一、接種直後に胃の内容物の大半を吐き出した場合には、接種医の判断で再接種を考慮してもよいことになっています。5価ロタウイルスワクチン接種直後に吐きだした場合は、その回の追加接種を行わないでください。追加接種時の安全性や有効性は確認されていません。

1価ロタウイルスワクチン
Q.2回目の接種が生後24週を過ぎてしまったら、もう接種はできませんか。あるいは無効ですか。(1価ロタウイルスワクチン)
A.接種できません。ロタウイルス胃腸炎は母体由来の免疫がなくなった後に初感染したときが最も重症化しやすく、ワクチンの接種の目的はこれを予防することにあります。そのため、早めに接種を終わらせることが重要ですので、2回目の接種は生後24週までに完了してください。

5価ロタウイルスワクチン
Q.3回目の接種が生後32週を過ぎてしまったら、もう接種はできませんか。あるいは無効ですか。
A.接種できません。生後32週以降の接種は、安全性や有効性が確認されていません。効果の点からも早めに接種を終わらせることが重要ですので、3回目の接種は生後32週までに完了してください。

参考資料として
・「最新感染症ガイドR‐Book 2012」-日本小児医事出版社 2013年10月発行(編集:米国小児科学会、監修:岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長)
・「予防接種に関するQ&A集・ロタウイルス」-一般社団法人日本ワクチン産業協会(岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長、多屋馨子国立感染症研究所感染症疫学センター第三室(予防接種室)室長 )
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2014/10