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 主にコガタアカイエカによって媒介され、日本脳炎ウイルスによっておこるウイルス感染症であり、ヒトに重篤な急性脳炎をおこす。日本脳炎ウイルスはフラビウイルス科に属するウイルスで、1935 年ヒトの感染脳から初めて分離された。

概要・感染経路

 日本脳炎ウイルスは水田や沼地等の大きな水たまりに発生する蚊(日本では主にコガタアカイエカ)によってウイルスに感受性のある脊椎動物(ヒト、ウマ、ブタ等)の間で伝播します。ヒトはウイルスを保有している蚊に刺されることによって感染・発症します。コガタアカイエカは暑い日中よりも、日没以降から活動が活発になることから、日没以降に野外に出る際は、蚊避け剤の使用や衣類を工夫する等、なるべく蚊に刺されないようにすることも大切な予防法の1つです。

 日本脳炎ウイルスのヒトへの伝播においてブタは重要な役割を果たしています。ブタは感染を受けることによって多量のウイルスを体内で生成し、血液中にウイルスが検出されるウイルス血症を起こします。日本脳炎ウイルスを多量に含む血液を蚊が吸血し、ウイルスを保有する蚊となって、またそれが他のブタへと伝播して、蚊からブタへ、ブタから蚊へのウイルス伝播のサイクルが成立します。この間にウイルスを保有する蚊が大量に発生し、日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されることによって、ヒトは日本脳炎ウイルスに感染します。最近、野生のイノシシもブタと同様、感染後にウイルス血症を起こす動物として注目されています。日本脳炎ウイルスの感染環においてヒト、ウマは終末宿主といわれています。

 日本脳炎は日本脳炎ウイルスに感染した100〜1,000人に1人が発症すると報告されています。(異なる調査結果のため、頻度が異なります)。

症状

 日本脳炎を、発症すると高熱・頭痛・嘔吐・意識障害やけいれん等の症状を示す急性脳炎を起こします。典型的な病型は髄膜脳炎型ですが、脊髄炎症状が顕著な脊髄炎型の症例もあります。発症すると、筋強直、脳神経症状、不随意運動、振戦(細かいふるえのこと)、麻痺、病的反射等が現れますが、感覚障害は稀とされています。麻痺は上肢で起こることが多く、脊髄障害や球麻痺症状(延髄の運動核の障害による麻痺のこと)も報告されています。致死率は20〜40%(国内での過去25年間では約17%)で、幼少児や高齢者では死亡のリスクが高く、精神神経学的後遺症は生存者の45〜70%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多いとされています。
 

予防接種

〇定期接種の対象年齢
 1期:定期接種では生後6か月以上90か月未満の者(標準的には1期初回は3歳以上4歳未満、1期追加は4歳以上5歳未満)
 2期:定期接種では9歳以上13歳未満の者(標準的には9歳以上10歳未満)

 標準的な接種間隔で受けることが最も推奨されますが、何らかの理由によりその間隔を越えて接種した場合でも、定期接種の対象年齢の範囲であれば、定期接種として実施することができるようになりました。(平成26(2014)年度より)

〇特例対象者
 平成17(2005)年度から平成21(2009)年度にかけて実施された日本脳炎ワクチンの積極的な勧奨の差し控えにより接種を受ける機会を逸した者(平成7(1995)年4月2日から平成19(2007)年4月1日までの間に生まれた者)で4歳以上20歳未満の者(平成26(2014)年8月現在、7歳以上20歳未満)は特例対象者とされています。

1)4回の接種が完了していない場合(接種を全く受けていない者を除く)
残りの予防接種は、1回0.5mLを6日以上の間隔をおいて皮下に接種します。

2)接種を全く受けていない場合
@第1回目の接種(第1期初回接種の第1回目に相当)は、皮下に0.5mLを接種します。
A第2回目の接種(第1期初回接種の第2回目に相当)は、第1回目の接種後6日以上の間隔(標準的には6〜28日の間隔)をおいて皮下に0.5mLを接種します。
※なお、接種後の抗体反応を考慮すると、6日の間隔で2回接種するより、28日の間隔で2回接種した方が抗体反応は良好と考えられています。
B第3回目の接種(第1期追加接種に相当)は、第2回目の接種後6か月以上あけて(おおむね1年を経過した時期に)、0.5mLを皮下に接種します。
C第4回目の接種(第2期接種に相当)は、9歳以上の者に対し、第3回目の接種後6日以上の間隔をおいて0.5mLを皮下に接種します。ただし、第1期の接種を3回受けた人は、最後の接種からおおむね5年〜10年毎に1回接種することで、日本脳炎の発症を予防することが可能なレベルの抗体が維持されることが期待されています。

〇ワクチンの副反応
 主な有害事象は、局所の反応としては、紅斑(淡紅色の発疹)、内出血、疼痛(ずきずきする痛み)、腫れ、そう痒感(痒み、むずむず)等があります。全身の反応としては、発熱、発疹、じんましん、紅斑、頭痛、咳、鼻水、咽頭発赤、咽頭痛、嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛等があります。稀にショック、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎、脳炎・脳症、けいれん、血小板減少性紫斑病等を起こしたとの報告があります。年長児に接種する際には、接種直後の血管迷走神経反射による顔色不良、気分不良、冷汗、徐脈、血圧低下、失神等の発生に注意が必要です。

 平成25(2013)年7月1日〜平成26(2014)年2月28日までの副反応報告頻度は、医療機関からの報告が0.003%、製造販売業者からの報告が0.001%でした。接種人数のべ約260万人のうち、医療機関から副反応の報告があった71名は、うち21名が重篤症例(うち1名死亡)でした。

参考として
・国立感染症研究所ホームページ
・「予防接種に関するQ&A集・日本脳炎」-一般社団法人日本ワクチン産業協会(岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長、多屋馨子国立感染症研究所感染症疫学センター第三室(予防接種室)室長 )
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2014/11