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概要

 デング熱とは、蚊によって媒介する感染症です。 デング熱感染後の潜伏期間は2〜15日(多くは、3〜7日)。その後、突然の発熱で発症し、頭痛、結膜充血等を伴うことが多くあります。この初期症状に続いて全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈します。発症の3〜4日後には胸部や体幹から始まる発疹が出現して顔面や四肢にも広がっていきます。 世界的には、デング熱はアジア、アフリカ、中東、中南米、オセアニア等の熱帯・亜熱帯地域を中心に流行しており、年間1億人近くの患者が発生していると推定されています。 重症化すると、デング熱を発症すると、通常1週間前後の経過で回復・治癒しますが、1〜5%の患者は、出血傾向やショック症状を呈する重症型デングとなります。

 感染経路は、蚊(ネッタイシマカとヒトスジシマカ)によって媒介される感染症です。ヒトからヒトへの直接の感染伝播はありません。日本脳炎のようにウイルスを増幅させる他の動物もいません。デングウイルスは、感染しているヒト→媒介蚊→ヒト→媒介蚊→ヒトと伝播します。ヒトスジシマカは青森県以南の日本国内に広く分布しているヤブカであり、その活動時期は、5月中旬〜10月中旬です。ヒトスジシマカの幼虫は、例えば、ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルに溜まった水、放置されたブルーシートや古タイヤに溜まった水などによく発生します。

 治療法は、デングウイルスに特異的に効果のある薬剤はなく、水分補給や解熱剤の投与等の対症療法が中心となります。

予防法は、デング熱に対するワクチンは現時点ではありません。予防には、蚊の吸血を防ぐ対策をとることです。ヒトスジシマカにヒトがよく刺されるのは、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などです。デング熱は発症者から直接感染することはありません。

■デング熱の詳細情報
【はじめに】
 デング熱はアジア、アフリカ、中東、中南米、オセアニア等の熱帯、亜熱帯地域を中心に流行しており、年間 1 億人近くの患者が発生していると推定されています。近年、東南アジアや中南米での患者数の増加が顕著となってきており、このような流行地で日本からの渡航者がデング熱に感染するケースも多く、帰国後に日本国内で診断される患者数は最近では年間 200 名以上となってきています。このようなデング熱の輸入症例の増加と共に、国内でデングウイルスに感染して患者が発生する可能性が高くなっています。

 実際に、2013 年 8 月には日本国内のみを観光旅行していたドイツ人が母国に帰国した後でデング熱を発症しました。2014 年 8 月には首都圏で渡航歴のない複数名の患者発生がみられ、代々木公園内での感染が疑われています(2014 年 8 月 29 日)。

 デング熱を媒介するヒトスジシマカは、青森県以南の日本国内に普通にみられる蚊です。今後は、海外渡航歴のない人であっても、発熱、発疹等の症状がある場合には、デング熱の発症を疑って対応する必要性があります。

 以下にデング熱の病原微生物、疫学情報、感染経路、臨床所見、診断、治療、国内の発生動向についてお話します。

デング熱の原因

 デング熱の原因はデングウイルスです。日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスです。エンベロープを有する一本鎖 RNA ウイルスです。

 デングウイルスは、4つの血清型(1型、2型、3型、4型)に分類され、例えば、1型に感染した場合は、同型に対しては、その後修正免疫を獲得するが、他の血清型に対する交叉免疫は、数か月で消失するために、他の血清型に感染した場合にはデング熱を発症する可能性があります。

デング熱の疫学

 デング熱の流行がみられるのは、媒介する蚊の存在する熱帯・亜熱帯地域、特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国ですが、アフリカ、オーストラリア、中国、台湾においても発生しています。

 世界中では、毎年5000万〜1億人がデング熱に罹患していると考えられています。日本では、海外で感染して、帰国後に発症する輸入症例が近年は増加してきました。

 過去60年以上にわたって国内における感染の報告はありませんでしたが、2013年8月に日本国内で感染したと推定されるドイツ人の1例が、翌2014年8月には3例の国内感染例が確認され、その後は多くの感染例が報告されました。

デング熱の感染経路

 デング熱は、蚊によって媒介される感染症であり、ネッタイシマカとヒトスジシマカが主な媒介蚊です。ヒトからヒトへの直接の感染伝播はありません。日本脳炎のようにウイルスを増幅させる他の動物もいません。

 デングウイルスは、感染しているヒト→媒介蚊→ヒト→媒介蚊→ヒトと伝播します。

 デングウイルスを媒介するメスの蚊が感染してウイルス血症を起こしているヒト(ヒトがデング熱を発症した場合、血液中にデングウイルスが検出される期間は、発症日の前日から発症5日後までです。)を吸血してウイルスが蚊の体内に取り込まれると、蚊の体内でウイルスが増えて、7日目にはウイルスが唾液腺に移動して次の吸血時にヒトに感染させることが可能になります。

 ヒトスジシマカは青森県以南の日本国内に広く分布しているヤブカであり、その活動時期は、5月中旬〜10月中旬です。ヒトスジシマカの幼虫は、例えば、ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルに溜まった水、放置されたブルーシートや古タイヤに溜まった水などによく発生します。

 ヒトがよく刺されるのは、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などとされています。真夏であれば産卵後数日から1週間で幼虫が出現し、その後10日ほどで成虫となります。外気温にもよりますがメス成虫の寿命は、30〜40日です。

 ヒトスジシマカは日本国内では、冬に成虫が生存することはできず、卵で越冬します。卵を通じてデングウイルスが次世代の蚊に伝播した報告はありません。従って、たとえ日本国内でデングウイルスが循環してデング熱の流行が発生しても冬には国内のウイルスは消滅すると考えられています。
ネッタイシマカのデングウイルスの媒介能は、ヒトスジシマカよりも高いとされていますが、現在、日本国内には生息していません。しかし、航空機によって国内に運ばれる例も確認されており、昨今の地球温暖化の影響によって国内に定着する可能性はゼロではありません。

デング熱の臨床所見

 感染後の潜伏期間は2〜15日(多くは、3〜7日)。その後、突然の発熱で発症し、頭痛、結膜充血等を伴うことが多くあります。この初期症状に続いて全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈します。発症の3〜4日後には胸部や体幹から始まる発疹(麻疹様紅班や紅色丘疹)が出現して顔面や四肢にも広がっていきます。この発疹は麻疹のように癒合傾向はありません。発熱は、ほぼ全例に認められ、2〜7日間持続し、麻疹のように二峰性であることが多くあります。通常は、解熱後にそのまま治癒することが多いです。検査所見では血小板減少や白血球減少を半数近くの発症者に認められます。CPRは、通常は正常であり、上昇しても高値とはならないことが特徴です。

重症型デング

 デング熱を発症すると通常は、1週間前後の経過で回復・治癒しますが、一部の患者では、出血傾向やショック症状を呈する重症型デングとなります。デング熱の患者が解熱する時期に突然発症し、その病態は血管透過性の亢進、血小板減少、血液凝固障害等による循環障害によるものと考えられています。これらによる胸水・腹水の貯留、出血傾向(鼻、歯肉、眼底、消化管等からの出血)、肝機能障害(ALT、AST の上昇)等が認められ、更に重症化するとショック状態となることもあります。この重篤期は、24〜48時間続き、この時期を乗り切ると2〜4日の回復期を経て治癒に向かいます。重症型デングを発症する割合は、デング熱患者のうちの1〜5%とされており、2006 年〜2010 年に日本国内でデング熱と診断された 581 名では 24 名(4.1%)が重症型デングであるデング出血熱と診断されました。

 デング熱患者が重症化するトリガーについては、血清型の異なるウイルスの再感染に起因するという説が有力であり、重症型デングの 9割以上が二次感染時に発生しているといわれています。しかし、三次感染、四次感染ではむしろ防御的に働くことが多く、ウイルス自体の病原性の強さによるとの説もあって定まっていません。

■重症型デングに進行する危険性のある兆候
1、腹痛・腹部圧痛
2、持続的名嘔吐
3、腹水・胸水
4、粘膜出血
5、無気力・不穏
6、肝肥大(2p以上)
7、ヘマトクリット値の増加(20%以上)
※重症型デングに進行する危険性のある兆候《デング熱患者では表中にあげている1〜7の症状や検査所見を1つでも認めた場合は、重症化への危険兆候ありと判定する》

引用:厚生労働省ホームページ「デング熱診療マニュアル」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever.html

デング熱を疑うべき患者の基準

(A)必須所見
1、突然の発熱(38℃以上) 2、急激な血板減少(10万/μ1以下)
(B)随伴所見
1、発疹 2、悪心・嘔吐 3、骨関節痛・筋肉痛 4、頭痛 5、白血球減少 6、点状出血(あついはターニケットテスト陽性)
(C)除外所見
CPRが10mg/dl以上の患者
※上記の診断基準、Aの2つの所見に加えて、Bの6項目のうちの2つ以上の所見を認める場合はヒトスジシマカの活動時期であれば渡航歴の有無に関わらずデング熱を疑います。ただし、Cの所見がある場合は除外します。
引用:厚生労働省ホームページ「デング熱診療マニュアル」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever.html

デング熱の治療

・デングウイルスに特異的に効果のある薬剤はなく、水分補給や解熱剤の投与等の対症療法が中心となります。
・アスピリンは出血傾向を助長したり、ライ症候群の発症を惹起する恐れがあるので投与禁忌であり、解熱剤にはアセトアミノフェン等を用います。
・重症型デングの場合は循環血液量の減少を改善させるための輸液療法が中心となる。
・大量の出血がみられた場合には輸血が、血小板減少に伴う出血症状の改善のためには血小板輸血が必要となる場合があります。
・重症型デングを放置すれば致死率は 10〜20%となるが、適切な治療を行うことによって 1%未満に低下させることができます。
・2006 年〜2010 年に日本国内でデング熱と診断された患者では死亡例はありませんでした。

デング熱の予防

・デング熱に対するワクチンは現時点ではありません。
・予防には蚊の吸血を防ぐ対策をとる(ヒトスジシマカにヒトがよく刺されるのは、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などです)。
・デング熱は発症者から直接感染することはありませんが、針刺し事故で感染する可能性は否定できないため、医療機関では注意が必要です。

国内のデング熱の発生動向

 日本国内で診断されたデング熱の報告数は近年増加傾向にあります。
2010年 244 例、2012年 221 例、2013年 249 例と年間の累積報告数(2012 年、2013年は暫定値)が 200 例を超えることも珍しくありません。
2014年は、100 例以上の国内感染発症例が認められました。
デング熱は 1942〜1945 年にかけて日本国内で流行しましたが、その後、国内での患者発生例はありませんでした。しかし、2014 年は 69 年ぶりに国内での感染例が認められており、早期診断のための検査キットの普及や疑わしい患者への検査の推奨等により、今後さらに患者報告数の増加と新たな国内発生例が検知される可能性が高まっていると考えられます。デング熱の発生動向は今後とも注意深く見守っていく必要があります。

参考資料として
・厚生労働省ホームページ
・国立感染症研究所ホームページ
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2014/10