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概要

 インフルエンザ菌は、ヒトの鼻咽腔に常に存在しています。その多くは無莢膜株ですが、小児の髄膜炎や敗血症例から検出される株は、95%以上がHibです。また、Hib感染症患児の兄弟や両親からHibが検出される場合もあります。

 5歳以下のHib髄膜炎の罹患率は、Hibワクチン導入前の欧米、北アメリカ、アラスカ地域では、10万人対40~300人でした。しかし、Hibワクチンを定期接種として導入した米国などでは、罹患率は着実に低下して、現在は「ほぼ0」に減少しました。ただし、最近あらたに、Hibワクチンで防御できない無莢膜株による小児の中耳炎などが市中感染症(CAI)として問題となりつつあります。

インフルエンザ菌感染症と症状

 一般的には、ウイルスなどによる「風邪」の回復期にしつこい痰(膿性)が続く場合などに、喀痰(かくたん)からインフルエンザ菌が検出されることが多く、生物型IIまたはIII型の無莢膜株は、中耳炎、副鼻腔炎、慢性気管支炎、結膜炎からしばしば検出されます。莢膜血清型がb型で生物型I型株は、主に生後4か月以降の乳幼児の敗血症や髄膜炎の起因菌となることが多く、急性喉頭蓋炎(閉塞性喉頭炎)の原因にもなります。成人の肺炎は、有莢膜株による場合が多いです。

感染症発生動向調査によると

 2013年4月~2014年8月20日までに計235例(男:女=1.6:1)が報告されました。患者年齢分布は小児と高齢者にピークがあり、全症例に対する5歳未満と65歳以上の割合は17%、57%でした。5歳未満では菌血症を伴う肺炎症例は33%(13/39)、髄膜炎症例は23%(9/39)、菌血症例は44%(17/39)でした。小児では成人に比べて髄膜炎例が多く、特に6か月齢未満児の髄膜炎例は63%(5/8)と高率でした。また、成人例の特に65歳以上では菌血症を伴う肺炎が61%(82/134)と多くを占めました。

ワクチン

 Hibワクチンは、2008年12月に販売開始され、2010年11月には5歳未満の小児に対して「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」により公費助成の対象となり、2013年4月より定期接種化されました。

 2007年度から始まった「ワクチンの有用性向上のためのエビデンスおよび方策に関する研究」によると、10道県の5歳未満小児の人口10万人当たりの侵襲性Hib感染症罹患率は、公費助成前の2008~2010年に髄膜炎7.71、非髄膜炎5.15に対して、Hibワクチン導入後の2013年にはそれぞれ0.17、0.10まで減少しました。


参考資料として
・国立感染症研究所ホームページ「IASRインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)
(Vol. 31 p. 94-95: 2010年4月号)」http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/362/dj3621.html
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2014/10