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A型肝炎ウイルス(HAV)による疾患です。

症状

 A型肝炎ウイルス(HAV)は、糞口感染で伝播します。潜伏期は2〜6週間です。発熱、倦怠感などに続いて血清トランスアミナーゼ (ALTまたはGPT、ASTまたはGOT)が上昇します。食思不振、嘔吐などの消化器症状を伴いますが、典型的な症例では黄疸、肝腫大、濃色尿、灰白色便など を認められます。まれに劇症化して死亡する例を除き、1〜2か月の経過の後に回復します。トランスアミナーゼの正常化に3〜6か月を要する例や、正常化後に再上昇 する例もありますが、慢性化せず、予後は良好です。

 他の急性ウイルス性肝炎と比較して、A型肝炎の臨床症状での特徴は、発熱、頭痛、筋肉痛、 腹痛など、いわゆる肝炎症状が強いことがあげられます。しかし、臨床症状や肝障害の改善は早いです。肝機能検査では、他の急性肝炎の場合よりAST、ALT、 ALP、LDHなどが高い傾向がありますが、正常化するまでの期間は最も短いです。他の血清検査ではIgMの増加、チモール混濁反応 (TTT値)で判定される膠質反応の上昇が特徴的です。成人では小児に比べ、臨床症状も肝 障害の程度も強い傾向があります。肝外合併症としては、急性腎不全、貧血、心筋障害などが知られています。

治療

 特異的治療はありません。治療法は安静や対症療法が中心ですが、多くは1〜2か月の経過で回復し慢性化しません。治癒後には強い免疫が残ります。しかし、まれに劇症化(0.1%)して死亡することがあります。

年齢別

 小児では不顕性感染(感染しているにもかかわらず無症状であること)が80〜95%と多いため、時に無症状のまま、集団発生の感染源となることもあります。一方、成人では顕性感染が75〜90%と多いです。通常、年齢が上がるに従って、重症度も上昇し、A型肝炎の症例全体の致死率は0.1%以下ですが、50 歳以上では2.7%に達します。

感染経路

 A型肝炎ウイルス(HAV)は、糞便中に排泄され糞口感染によって伝播します。HAVの糞便中への排出は、感染して2週間以降に始まり、発症時にピークを迎え、発症後は1週間以内に激減します。A型肝炎の発生状況は衛生環境に左右され、衛生環境の未整備な途上国では、10歳までにほぼ100%が感染して、無症状のまま抗体を保有するといわれています。

 日本では、糞便で汚染された水や食事による大規模な集団発生は稀で、感染経路としては、魚介類の生食などによる経口感染や、性的接触などが報告されています。魚介類が原因と推定された食中毒事例や、飲食店における集団感染事例が少なからずみられています。

予防法

 汚染された水や食材を口にしないことです。A型肝炎と診断された患者と接する際には適切な糞便処理や手指衛生を心がけることなどが挙げられます。さらに魚貝類は、85〜90℃で少なくとも4分間の加熱または、90秒蒸すようにします。

★予防としてのA型肝炎ワクチン
 日本では1995年から16歳以上を対象に任意の予防接種として使用されており、希望すれば国内の医療機関で接種を受けられます。主に途上国への渡航者ワクチンとして使用されており、一般住民が広く接種している状況ではありません。実際に、我が国の過去の血清疫学調査によると、2010年時点では、55歳未満の年齢層はほとんど抗体を保有していないものと考えられ、重症化リスクが高い年齢層に抗体を保有していない者が増加しつつあります。重症患者の増加や家族内発生や集団感染への注意が必要です。


参考資料として
・国立感染症研究所ホームページ「IDWR 2014年第22号<注目すべき感染症> A型肝炎の発生動向」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/hepatitis-a-m/hepatitis-a-idwrc.html
・国立感染症研究所ホームページ「A型肝炎とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/320-hepatitis-a-intro.html
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2014/10