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人と人との距離を保つことが重要 人と人との距離を保つことが重要
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、4月7日の日本国内の緊急事態宣言発令後、多くの方々の努力により、患者数の急増が見られた首都圏や関西地方においても流行のオーバーシュートは発生しておらず、今後、患者発生数が減少していくことも期待されるようになってきています。しかし、いまここで安心し、対策の手を緩めてしまうと、患者数が再び急増する可能性が高く、また首都圏や関西地方以外の全国の地域でも患者の発生が見られていることから、全国的な流行に移行することは何としても避けなければなりません。その意味では、ゴールデンウィークを含む5月は、今後の日本国内の流行を左右する大事な時期であると思われます。

各国の状況

 WHOの発表によると、2020年4月27日現在、世界の患者数は約287万人、死亡者数は約19万人を数えています。

症状について

 発熱・鼻水・のどの痛み・咳などといった、風邪のような症状から始まります。また、頭痛や強い倦怠感などが良く見られる症状です。下痢や味覚・嗅覚障害を伴うことも少なくはありません。症状の続く長さ(期間)については、風邪やインフルエンザと比べて長いという特徴があるようです。中国のデータによると、患者の8割は軽症で治癒するようです。一方、2割弱の患者では、肺炎の症状が強くなり、入院して酸素投与などの治療が必要になることがあります。重症化する場合は、発症から1週間前後で発熱や呼吸困難などの症状が悪化し、場合によっては人工呼吸器による管理が必要となる例も見られています。特に発症から10日間前後は、病勢が進行していく場合が多いですから、最初は軽症であると思っても、慎重な経過観察が必要です。

 新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方と言われています。中国CDCのデータによると、高齢者ほど致死率が高くなることが示されています。厚生労働省が示している「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」にあるように、こういった方は一般の方よりも早めに、帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。

日本国内の状況

 日本政府は4月7日、国内で感染者が急増している地域を中心に緊急事態宣言を発令しました。その後、4月16日に対象地域が全都道府県に拡大されました。期間は5月6日までの1か月程度としています。また、東京都、大阪府、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県については特定警戒都道府県とされており、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があります。また厚生労働省は4月2日、軽症・無症状の人は、自宅や宿泊施設など病院以外の施設での療養を都道府県に求めました。一部の地域ではこの取り組みが進みつつあります。

 厚生労働省によると4月27日現在、日本国内の感染者は13,385例で、内訳は、患者8,097例、無症状病原体保有者940例、陽性確定例(症状有無確認中)4,348例となります。国内の死亡者は351名です。また、国内での退院者は2,905名となりました。

 3月下旬以降、東京を中心とした首都圏や、大阪を中心とした関西圏で患者数が大幅に増加しており、そういった地域から就職や帰省などで地方へ移動した感染者が地方で感染を広げる事例が増えてきています。こういった事例が続くと、都市圏だけでなく地方でもクラスターが発生し、医療崩壊につながる可能性があります。クラスター発生から高齢者への感染が起こると、重症例や死亡例が出ることも珍しくはありません。

予防について

 コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原則として空気感染はありません。最も重要な対策は、咳エチケットと手洗い・アルコール消毒など手指衛生を徹底することです。手洗いが大切な理由は、ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があるからです。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。また、感染拡大を防ぐため、人と人との距離を保つことが重要です。

正しい手洗いの方法

 手洗いは、新型コロナウイルスを含む感染症対策の基本です。

 1.流水でよく手をぬらし、石けんをつける

 2.石けんを泡立てて、手のひらをよくこする

 3.手の甲をしっかりのばすようにこする

 4.指の先・爪の間を念入りにこする

 5.指の間を洗う

 6.親指を反対の手でねじり洗いをする

 7.手首も忘れずに洗う

 8.流水で十分に洗い流す

 9.清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き、乾かす

 手を洗う前に時計や指輪など外して、手首までしっかり洗えるようにしましょう。また、爪はなるべく短く切っておきましょう。

感染拡大を避けるために

 感染しやすい場所の特徴を理解しましょう。専門家会議によると、これまで集団感染が確認された場所に共通するのは、

 (1)換気の悪い密閉空間

 (2)多くの人が密集していた

 (3)近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた

 という3つの条件(3つの密)が同時に重なった場所です。こうした場所ではより多くの人が感染していたと考えられます。これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面をできるだけ予測し、避ける行動をとりましょう。また、これら3つの条件がすべて重ならないまでも、1つまたは2つの条件があれば、なにかのきっかけで3つの条件が揃うことがあります。3つの条件ができるだけ同時に重ならないようにすることが対策となります。

 また日本政府は、緊急事態宣言に合わせて、人との接触を8割減らすよう、外出の自粛を呼びかけていますが、国の専門家会議は4月22日、新型コロナウイルス感染対策のため、人との接触を8割減らす10のポイントを示しました。緊急事態宣言の中、誰もが感染するリスク、誰でも感染させるリスクがあります。新型コロナウイルス感染症から、自分自身と身近な人の命を守れるよう、日常生活を見直してみましょう。

 1.ビデオ通話でオンライン帰省

 2.スーパーは1人または少人数ですいている時間に

 3.ジョギングは少人数で、公園はすいた時間場所を選ぶ

 4.待てる買い物は通販で

 5.飲み会はオンラインで

 6.診療は遠隔診療 定期受診は間隔を調整

 7.筋トレやヨガは自宅で動画を活用

 8.飲食は持ち帰り、宅配も

 9.仕事は在宅勤務 通勤は医療・インフラ・物流など社会機能維持のために

 10.会話はマスクをつけて

 また、感染者を必要以上に非難・批判したり、差別的に扱うことは、感染状況の調査に悪影響を与えるだけでなく、社会的な息苦しさや不必要な不安を生み出すことになりるため、やめるべきです。

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)

■参考リンク:厚生労働省新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏