3月に注意してほしい感染症

【No1】麻しん(はしか)…2019年のこれまでの患者報告数は、2013年以降の同時期と比べて最も多くなっています。麻しんは本来、春から夏にかけて流行する感染症であり、現在の状態が続けば患者数はさらに増加し、関西地方のみならず、より広域に流行が拡大していくことが危惧されます。

【No2】ロタウイルス感染症…例年3〜5月のピークにむけて、3月は、患者数が増加してくる時期です。生後6か月以降2歳未満の時期に感染するともっとも重症化しやすいといわれています。

【No3】伝染性紅斑(りんご病)…昨年の秋より患者数の増加が始まり、2015年以来の流行となることが予想されます。特に妊婦が感染すると、流産の原因となることがありますので、妊娠中の女性は注意が必要です。

【No4】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)…学校の春休みが始まる頃までは、患者数の増加がみられることが多いです。特に、幼児や学童の集団施設での発生にご注意ください。

感染症ごとに、更に詳しくみていきましょう。

麻しん(はしか)

 麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる急性熱性発疹性の感染症です。麻しんウイルスは人のみに感染するウイルスであり、人から人へ感染が伝播していきます。その感染力は非常に強く、感染経路としては、空気感染、飛沫感染、接触感染によって感染します。同じ部屋にいるだけで「空気感染」することもあり、手洗い、マスクのみで予防はできません。免疫を持っていない人が感染するとほぼ全ての人が発症します。

 潜伏期間は10日から12日間の潜伏期を経て発症し、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復期へと至ります。38度前後の発熱が2日から4日続き、発症すると発熱、咳、鼻水など風邪のような症状が現れ、2〜3日後には39度以上の高熱と発疹が現れます。肺炎や中耳炎などの合併症を起こしやすく、さらに、患者1,000人に1人の割合で脳炎を発症すると言われています。その後、一旦はやや熱が低くなるものの、再び39度以上の高熱が出るとともに、麻しん特有の発疹が現れ2日後には全身に広がります。

 麻しんにはいずれも特効薬はありません。もしも、発症してしまった場合の治療は、症状を和らげる対症療法となります。

 麻しんの感染発症を防ぐ唯一の予防手段は、MRワクチンという麻しんと風しんを混合したワクチンがあります。予めワクチンを接種をすることがもっとも有効で麻しんに対する免疫を獲得しておくことです。

麻しん(はしか)

ロタウイルス感染症

 ほとんどすべての子どもが4〜5歳までに感染します。初感染であれば新生児期を除いて不顕性感染(感染していながら臨床的に確認しうる症状を示さず健康にみえる状態)はまれです。生後6か月以降2歳未満の時期に感染するともっとも重症化しやすいといわれており、入院治療を必要とする乳幼児下痢症の35〜52%がロタウイルスによるものです。

 かかりやすいのは乳幼児で、特に1歳児に多く、年齢が上がるにつれだんだんと減っていきます。脱水などのために入院治療が必要となるのはほとんどが就学前(6歳以下)の乳幼児で、2歳未満児(ただし、3か月以上)が過半数を占めます。生涯をとおしてロタウイルス感染は繰り返し起こりますが、一般に年長児や成人は不顕性感染となります。

 従来、12〜1月に流行し、冬季下痢症と呼ばれてきましたが、最近の日本での流行のピークは3〜5月となっています。初冬(11月〜1月)に流行するノロウイルス感染症とれ替わるようにロタウイルスの流行がみられ、ウイルス性胃腸炎として二峰性のピークを示すことが最近の日本での流行の特徴です。

ロタウイルス感染症

伝染性紅斑(りんご病)


 妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。

 4〜5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。

 感染後10〜20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。

伝染性紅斑(りんご病)

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)


 溶連菌感染症の症状が疑われる場合は、速やかにかかりつけ医を受診しましょう。溶連菌感染症と診断され、抗菌薬が処方された場合は、医師の指示に従うことが重要です。途中で抗菌薬をやめた場合、病気の再燃や糸球体腎炎などの合併症を来すことが知られています。

 溶連菌感染症は、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な症状が現れることは少ないといわれています。症状としては2〜5日の潜伏期間を経て、38度以上の発熱と全身倦怠感、のどの痛みによって発症し、しばしばおう吐を伴います。

 また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発しんが広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、十分な抗菌薬の投与による治療をおこなわないと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などを引き起こすことが知られています。

 主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)由来の飛沫による飛沫感染と濃厚な直接接触による接触感染です。物品を介した間接接触による感染は稀とされていますが、患者もしくは保菌者由来の口腔もしくは鼻腔由来の体液が明らかに付着している物品では注意が必要です。発症者に対しては、適切な抗菌薬による治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏