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グラフ.梅毒の患者報告数 年別推移(2009年~2018年30週まで)<br/> 監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則 グラフ.梅毒の患者報告数 年別推移(2009年~2018年30週まで)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則

梅毒とは

 梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。

 早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。

男女各年齢群の情報

 国立感染症研究所感染症疫学センター「感染症発生動向調査で届出られた梅毒の概要(2018年7月4日現在)」によると、男性は依然として20代から40代の幅広い年齢層から届出があります。

 女性は20代前半の届出が多くありました。このままでは、先天梅毒(※)の増加が危惧されます。

 ※先天梅毒:妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります。

<病型>
 感染早期の患者動向を反映する感染性の高い早期顕症梅毒が、継続して男女共に多く届出られていました。

 男性異性間においては、継続して早期顕症Ⅰ期が半分以上を占めていました。

 特に若い女性において増加しました。梅毒の発生動向について引き続き注視する必要があります。また、早期発見、早期検査、早期治療が重要です。

近年の梅毒の患者報告数

 2013年1228人
 2014年1661人
 2015年2690人
 2016年4518人
 2017年5770人

 2018年は、7月29日までの患者報告数が3820人(暫定値)となっており、このままでは、昨年の患者数を更に上回る可能性があります。

症状

 感染したあと、経過した期間によって、症状の出現する場所や内容が異なります。

<第Ⅰ期:感染後約3週間>
 初期には、感染がおきた部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)にしこりができることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。痛みがないことも多く、治療をしなくても症状は自然に軽快します。

 しかし、体内から病原体がいなくなったわけではなく、他の人にうつす可能性もあります。感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒の検査が勧められます。

<第Ⅱ期:感染後数か月>
 治療をしないで3か月以上を経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹が出ることがあります。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」とよばれています。

 発疹は治療をしなくても数週間以内に消える場合があり、また、再発を繰り返すこともあります。しかし、抗菌薬で治療しない限り、病原菌である梅毒トレポネーマは体内に残っており、梅毒が治ったわけではありません。

 アレルギー、風しん、麻しん等に間違えられることもあります。この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器の障害につながることがあります。

<晩期顕性梅毒(感染後数年)>
 感染後、数年を経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。また、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあります。

 現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く、抗菌薬が有効であることなどから、晩期顕性梅毒に進行することはほとんどありません。

 また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります(先天梅毒)。

感染経路

 主な感染経路は、感染部位と粘膜や皮膚の直接の接触です。具体的には、性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)等が原因となります。

検査方法

 梅毒に感染したかどうかは医師による診察と、血液検査(抗体検査)で判断します。どの医療機関でも検査は可能です。第Ⅰ期の最初の数週間は抗体検査をしても陽性反応が出ないことがあるため、感染してから十分な期間(約3週間)をおいて、検査結果を確認する必要があります。

 地域によっては保健所で匿名/無料で検査をできるところもあります。検査結果を正確に判断するために、感染の可能性がある時期や感染の予防状況(コンドーム使用等)について、医師に伝えましょう。 梅毒に感染していたとわかった場合は、周囲で感染の可能性がある方(パートナー等)と一緒に検査を行い、必要に応じて、一緒に治療を行うことが重要です。

治療方法

 一般的には、外来で処方された抗菌薬を内服することで治療します。内服期間等は病期により異なり、医師が判断します。病変の部位によっては入院のうえ、点滴で抗菌薬の治療を行うこともあります。

 医師が治療を終了とするまでは、処方された薬は確実に飲みましょう。性交渉等の感染拡大につながる行為は、医師が安全と判断するまではひかえましょう。

 また、周囲で感染の可能性がある方(パートナー等)と一緒に検査を行い、必要に応じて、一緒に治療を行うことが重要です。

予防法

 感染部位と粘膜や皮膚が直接接触をしないように、コンドームを使用することが勧められます。ただし、コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染がおこる可能性があるため、コンドームを使用しても、100%予防できると過信はせず、皮膚や粘膜に異常があった場合は性的な接触を控え、早めに医療機関を受診して相談しましょう。

一度梅毒になったので、もう免疫があると考えてよい?

 梅毒の感染は、医師が検査で血液中の免疫(抗体)を確認して判断をします。感染した人の血液中には、一定の抗体がありますが、再感染を予防できるわけではありません。このため、適切な予防策(コンドームの使用、パートナーの治療等)が取られていなければ、再び梅毒に感染する可能性があります。

梅毒について詳しく見る

出典:「梅毒に関するQ&A」(厚生労働省)
「日本の梅毒症例の動向について(2018年7月4日現在)」(国立感染症研究所)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員・安井良則