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図.溶連菌感染症 定点あたり報告数 年次別・週別推移(2017年は第39週まで)<br />監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏 図.溶連菌感染症 定点あたり報告数 年次別・週別推移(2017年は第39週まで)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
 2017年9月25日~10月1日(第39週)の定点当たり報告数が前週に比べて増加しました。

 今後冬休みの直前まで学校、幼稚園、保育園を中心に患者数が増加してくると予想されます。

 溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌感染症)は様々な臨床症状を引き起こしますが、最も多く発生している咽頭炎は子どもたちのあいだで日常的によく見られる症状です。

 十分な抗菌薬の投与による治療をおこなわないと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などを引き起こすことが知られています。

 溶連菌感染症は、学童期の小児に最も多く見られます。溶連菌感染症は、発症者の咳やくしゃみなどによる「飛沫感染」、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる「接触感染」によってうつりますので、家庭、学校などの集団での感染に注意が必要です。

地域別情報

 2017年9月25日~10月1日(第39週)の速報データ・定点当たり報告数ランキング
 ・鳥取県
 ・福岡県
 ・北海道
 ・山形県
 ・長崎県

 の順となっています。

症状

 溶連菌感染症は、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な症状が現れることは少ないといわれています。

 感染すると、2日~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしばおう吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。合併症としては、肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患、あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生じることもあります。

治療

 治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤も使用されます。

予防

 予防のためのワクチンは、まだ実用化されていません。

 予防としては、患者との濃厚接触をさけることが最も重要で、手洗い、うがい、咳エチケットなども有効です。

登校・登園基準

 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会 2017年4月改訂版『学校、幼稚園、保育所で予防すべき感染症』によると、溶連菌感染症の登校、登園基準は、「適切な抗菌薬による治療開始後24時間以降」とされています。

 厚生労働省の「2012年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン」では、抗菌薬内服後24~48時間経過していることと記載されています。

「学校、幼稚園、保育所で予防すべき感染症感染症毎の登校」について詳しく見る▼

溶連菌感染症について詳しく見る▼

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏