出典:国立感染症研究所感染症疫学センター 感染症発生動向調査週報 2015年第20週通巻第17巻第20号掲載資料 出典:国立感染症研究所感染症疫学センター 感染症発生動向調査週報 2015年第20週通巻第17巻第20号掲載資料
 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の定点当たり報告数は増加し、過去10年で最多となりました。喉の痛みと突然の発熱が同時におこり、喉がはれた場合は、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)を疑って、早めにかかりつけ医を受診しましょう。 適切な治療を行わなかった場合、リウマチ熱、急性糸球体腎炎など非化膿性の合併症を引き起こす可能性があります。発熱、咽頭痛などの疑わしい症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。最も患者数が増加する6~7月に向けて、長期にわたって、注意が必要です。

地域別情報

 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)が本格的な流行となっている都道府県は、北海道、山形県、福島県、埼玉県、東京都、新潟県、石川県、静岡県、鳥取県、島根県、広島県、山口県、愛媛県、福岡県、鹿児島県です。
 
 ※感染症アラート 2015年5月11日〜2015年5月17日 過去5年間の全国47都道府県の定点あたり報告数(厚生労働省・国立感染症研究所IDWR週報)の値の95%に相当するパーセンタイル点を超える値を本格的な流行としています。

症状

 潜伏期は2~5日ですが、潜伏期での感染性については明らかになっていません。発症する場合は突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛によって発症し、しばしば嘔吐を伴います。咽頭壁は浮腫状で扁桃には浸出液を伴っています。軟口蓋に点状出血がみられることがあり、更には特徴的な苺(イチゴ)舌が認められる場合があります。この苺舌ですが、発症早期には舌は白苔で覆われており、その後白苔が剥離した後で苺舌がみられます。発熱開始後12~24 時間すると点状紅斑様、日焼け様の皮疹が出現して猩紅熱と呼ばれる病態を呈することがあります。針頭大の皮疹により、 皮膚が紙ヤスリ様の手触りとなる事が特徴的です。この場合、通常顔面には皮疹はなく、額と頬が紅潮し、口の周りのみ蒼白にみえる(口囲蒼白)と言われています。

感染経路

 主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)由来の飛沫による飛沫感染と濃厚な直接接触による接触感染です。物品を介した間接接触による感染は稀とされていますが、患者もしくは保菌者由来の口腔もしくは鼻腔由来の体液が明らかに付着している物品では注意が必要です。発症者に対しては、適切な抗菌薬による治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2015/5/29