流行地域は注意 流行地域は注意
国立感染症研究所の2024年第23週(6/3-9)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は0.89。前週の0.84から微増となりましたが、岩手県では、警報レベルに達しています。都道府県別では、岩手県(3.15)・北海道(2.28)・富山県(2.14)・山形県(2.04)の順に高くなっています。別名「プール熱」とも呼ばれており、春から夏にかけて流行する感染症です。主にアデノウイルス3型(他に1、2、4、5、6、7型等でもみられる)に感染することによってみられる咽頭炎、結膜炎を主とする急性ウイルス性感染症です。なお、「プール熱」という名前の方が一般的に知られるようになり、プールに入ったら感染してしまうなどというイメージを持っている方もいらっしゃいますが、残留塩素濃度の基準を満たしているプールの水を介して感染することはほとんどありません。今回ご紹介するのは、『感染症・予防接種ナビ』に寄せられた、家庭内で感染したとみられる3歳のお子さんとお母さんの経験談です。

【2024年】6月に注意してほしい感染症!溶連菌感染症高水準維持 手足口病・咽頭結膜熱と言った夏の感染症に注意 医師「マイコプラズマ肺炎徐々に増加」

アデノウイルス感染症経験談 3歳 千葉県

6月3日17:30 年少を保育園へお迎えすると、発熱していた 2週間前に2歳の弟が溶連菌になっていたので、溶連菌かと思う いつもより凄く大人しくガタガタ震える39.4°食欲無し カロナールを飲ませて寝るも、深夜に熱があがるタイミングで両手両足が意識とは関係なく、ビクンビンクンと動き、本人はパニックで「ママー!」と泣き叫ぶ 意識があるタイプの熱性けいれん・間代性けいれんと思われる
6月4日 病院でアデノウイルス陽性と診断される カロナールの粉薬を貰う 薬を飲んでも夜意識あるタイプの熱性けいれんが出る
5日と6日 6時間ごとにカロナールの粉薬を飲ませる ガタガタ震えからの両手足ビクン泣き叫び高熱→汗かく熱下がるを6時間ごとに繰り返す 食欲なし 夕飯だけいつもの半分食べる ぐったり・ぼーっとしてよく寝る
6月7日8日まだ6時間ごとに熱のアップダウンはあるももの熱性けいれんは見られない カロナールも飲まなくても大丈夫になる とんでもなく機嫌が悪くなる 水分を飲んでくれない あらゆる飲み物を聞いても叩いたり蹴ったりして暴れる トイレも1回しか行っていない とにかくアイスで乗り切る お昼寝は5時間くらい寝る
9日 熱が出なくなる 
8日夜 母が発熱、下痢、喉の激痛、両方の鼻が詰まり寝られない 解熱鎮痛剤 去痰剤 整腸剤 トローチ を服用するも解熱鎮痛剤が切れるとダウンする6時間おきに服用する アデノウイルスを甘く見ていた…全然治らない、日毎に悪化していき喉の扁桃腺が真っ白に…唾も飲めない…水も飲めない。鼻水が直で喉にきて痰に血が混じる…辛い。とにかく現つ鎮痛剤を飲みまくる
12日 病院へ 母 アデノウイルス陽性 扁桃腺がえらいことになっている 抗生剤を貰うがアデノウイルスじゃ関係無いよね?
13日 発症6日目 また熱アップダウン 食欲不振 喉激痛 痰鼻水有り
14日 発症7日目 発熱終わり 喉の激痛がやっと右の扁桃腺が白いだけになる!左側は痛くない!終わりが見えてきました 

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「母子ともに辛かったと思います。お子さんが水を飲んでくれなかったとのことですが、余りに水分補給をしないようでしたら、脱水から点滴が必要になるケースもあります。お子さんは、上手に、現在の症状を伝えられない場合もあるので、保護者の方が気を配ってあげてください。今回の経験談も、直接診断した訳では無いので、結膜炎の有無など不明な点もありますが、一般的に咽頭結膜熱による、発熱症状はおよそ4日間続きます。お子さんがけいれんを起こされたとのことですが、突発的に強い寒気を感じて起こる『悪寒戦慄』のようにも見えます。また、熱性けいれんについてですが、個人差はあるものの、体温が上昇することに伴って、症状が現れるケースが見受けられます。解熱剤を過度に服用させてしまうと、却って症状を引き起こす可能性もありますので、注意が必要です。お母さんも、アデノウイルス陽性の検査結果が出たとのことですが、確かに、アデノウイルス感染症は、対症療法しかありません。抗生剤については、細菌性の2次感染を考慮して処方されたのだと考えられます。咽頭結膜熱の定点報告も春以降、落ち着きを見せてきたと思っていたら、夏の流行に向けて増加しています。

咽頭結膜熱とは…

咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39℃の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。

アデノウイルスの感染経路は?予防法は?

咽頭結膜熱などを起こすアデノウイルスは、飛沫感染、接触感染などでうつります。
・飛沫感染 感染している人や咳やくしゃみ、会話をした際に、病原体が含まれた小さな水滴(飛沫)が口から飛び、これを近くにいる人が吸い込むことで感染します。飛沫が飛び散る範囲は1〜2メートルです。子どもたちが遊ぶ時などは距離が近く、また感染したことがなく免疫がない子どもが多いため、集団感染が起こりやすくなります。保育所や幼稚園などでは、咳やくしゃみなどの症状がある場合、登園を控え、まわりにうつさないようにすることが重要です。
・接触感染 感染源に直接触れること(握手、だっこ、キスなど)や、汚染されたもの(ドアノブ、手すり、遊具など)に触れることでアデノウイルスが手に付着し、その手で口や鼻、眼などを触ることでも感染します。感染者が使用したタオルなどを共用することで感染することもあります。小さいお子さんではおもちゃをなめたりすることもあり感染を防ぐことは難しいですが、接触感染に最も重要な対策は手洗いなどにより手指を清潔に保つことです。小さな子どもは大人が手伝ってあげて、正しい手洗いの仕方でウイルスを除去することが重要です。

症状がなくなっても約1か月にわたってウイルスを排出

咽頭結膜熱は症状がなくなっても、約1か月にわたって尿や便の中にウイルスを排出するといわれています。トイレやおむつ交換等で衛生に気をつけないと、感染を広げる原因となります。また、感染しても発病しない場合もあるので、保育園、幼稚園、小学校などでは流行時期には集団感染に気をつける必要があります。

登園の目安は?

厚生労働省が発行する「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版)」によると、罹患した子どもの登園の目安は「発熱、充血などの主な症状が消失したあと2日を経過していること」となっています。アデノウイルスに感染したことがない小さなお子さんは、感染を防ぐことは難しいですが、身の回りを清潔に保ち、体調が悪いときは無理をせずに休むなど、感染症にかからない、そしてまわりにもうつさないよう、日々過ごしましょう。

引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2024年第23週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版)」
厚生労働省:咽頭結膜熱について

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏