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乳幼児の突然死の原因にも! 乳幼児の突然死の原因にも!
 大阪府の感染症発生動向調査週報2023年8週(2/20〜26)によると、RSウイルス感染症が前週との比較で30%増となりました。そのうちの35%は1歳未満の子どもということです。定点当たりの報告数はまだ0.27と低いものの、増加の兆しを感染症の専門医が指摘しています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに感染するとされています。

 症状としては軽い風邪のような症状から、重い肺炎まで様々です。しかし、初めて感染発症した場合は重くなりやすいといわれており、乳期、特に乳児期早期(生後数週間〜数か月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「RSウイルスは、大人は感染しても軽い風邪程度か、無症状の場合もあります。しかし、乳児など小さなお子さんでは、呼吸器に重大な症状が出て、咳が悪化、呼吸困難などが起こることがあります。また、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあり、決して軽く見てはいけない感染症です。大阪府での増加傾向は、一昨年の増加傾向とよく似ています。一昨年もこの時期から少しずつ増え始め、全国的には7月ごろにピークを迎えました。その時も都市部から地方へと感染が広がっていきましたので、この大阪での増加傾向が全国的な流行のきっかけになるのではないかと懸念しています」と語っています。

RSウイルスの症状は?

 通常RSウイルスに感染してから2〜8日、典型的には4〜6日の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁などの症状が続きます。多くは軽症で済みますが、重くなる場合には、その後咳がひどくなる、喘鳴(ぜんめい・・ヒューヒュー・ゼイゼイする)が出る、呼吸困難となるなどの症状が現れ、場合によっては細気管支炎、肺炎へと進展していきます。

初めて感染する乳幼児の症状は?

 初めて感染する乳幼児の場合、約7割は鼻汁など上気道炎症状のみで数日のうちに軽快しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などの症状が現れます。低出生体重児や、心臓や肺に基礎疾患があったり、神経や筋肉の疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化リスクが高まります。重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の赤ちゃんがRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するため診断が困難な場合があり、また突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

感染経路、予防方法、治療方法は?

 RSウイルス感染症は予防が難しい病気です。感染経路は飛沫感染と接触感染で、感染している人の咳やくしゃみ、会話している時の飛沫を浴びることで感染します。また、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり舐めたりすることで感染するので、保育所などで集団感染が起こることがあります。

 予防についてのワクチンは現在ありません。接触感染の予防としては、子どもたちが日常に触れる部分(おもちゃや手すり)などはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒し、流水・石鹸による手洗いかアルコール製剤による手指衛生が有効です。また特効薬はなく、治療は基本的には対症療法(症状を和らげる治療)になります。

大人が運ぶRSウイルス

 安井医師は、「RSウイルス感染症は、大人は症状が軽かったり無症状だったりするため、大人が感染を広げていることが多いのではないかと思っています。出張や旅行などで大都市から地方に移動することで、RSウイルスも広がっていきます。また、新生児や乳児はあまり外出することがないので、外から帰ってくる大人やきょうだいなどが感染源となり、家族で感染が広がるということもあります。乳幼児にとっては危険なウイルスですので、たとえ軽い風邪症状であっても、接触を避けるなどの注意が必要です」と語っています。

引用
大阪府:感染症発生動向調査週報2023年8週(2/20〜26)
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏