【感染症ニュース】風しん・先天性風しん症候群 国立感染症研究所「風疹急増に関する緊急情報:2019年8月21日現在」全文

2019年8月27日更新

国立感染症研究所 感染症疫学センター 風疹急増に関する緊急情報 <br />2019年8月21日現在(掲載日:2019年8月27日) 国立感染症研究所 感染症疫学センター 風疹急増に関する緊急情報
2019年8月21日現在(掲載日:2019年8月27日)
国立感染症研究所 感染症疫学センターは、2019年8月27日「風疹急増に関する緊急情報:2019年8月21日現在」を公開しました。その全文を掲載します。

風疹流行に関する緊急情報:2019年8月21日現在
国立感染症研究所感染症疫学センター

2019年第33週の風疹報告数
2019年第33週(8月12日〜8月18日)に25人が風疹と診断され報告された。遅れ報告も含めると、第1〜33週の風疹累積患者報告数は2,108人となり、第32週の2,079人から29人増加した(図1、2-1、2-2)。なお、第33週に診断されていても、2019年8月22日以降に遅れて届出のあった報告は含まれないため、直近の報告数の解釈には注意が必要である。

先天性風疹症候群の報告数
2008年の全数届出開始以降の風疹ならびに先天性風疹症候群の報告数を示す(図3)。2014年の報告以降、先天性風疹症候群の報告はなかったが(http://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/700-idsc/5072-rubella-crs-20141008.html)、2019年第4週・第17週・第24週に各1人、合計3人が報告された(報告都道府県:埼玉県、東京都、大阪府、推定感染地域:埼玉県、東京都、大阪府、性別:男3人、母親のワクチン接種歴:有り(回数1回、接種年不明、種類不明)1人、不明2人、母親の妊娠中の風疹罹患歴:不明2人、無し1人)。

わが国の風疹対策・目標
「風しんに関する特定感染症予防指針(厚生労働省告示第百二十二号:平成26年3月28日)」では、「早期に先天性風疹症候群の発生をなくすとともに、令和2年度までに風疹の排除を達成すること」を目標としている。先天性風疹症候群の発生を防ぐためには、妊婦への感染を防止することが重要であり、妊娠出産年齢の女性及び妊婦の周囲の者のうち感受性者を減少させる必要がある。また、現在の風疹の感染拡大を防止するためには、30〜50代の男性に蓄積した感受性者を早急に減少させる必要がある。このため厚生労働省は2019年〜2021年度末の約3年間にかけて、これまで風疹の定期接種を受ける機会がなかった昭和37(1962)年4月2日〜昭和54(1979)年4月1日生まれの男性(現在40歳4か月〜57歳4か月)を対象に、風疹の抗体検査を前置した上で、定期接種(A類)を行うことを発表した。

2013年以降の風疹報告数
2013年(14,344人)の流行以降、2014年319人、2015年163人、2016年126人、2017年91人と減少傾向であったが(図2-1,2-2,3)、2018年は2,946人が報告され、2019年は第33週時点で2,108人が報告された(図1,2-2,2-2,3)。

地域別報告数
地域別には東京都(788人:第32週から14人増加)、神奈川県(255人:第32週から1人増加)、千葉県(188人:第32週から6人増加)、埼玉県(182人:第32週から3人増加)、大阪府(125人:第32週から2人増加)からの報告が100人以上と多い(図4、7)。第33週は上記都府県以外に、複数報告された自治体はない(図5)。人口100万人あたりの患者報告数は全国で16.6人であり、東京都が58.3人で最も多く、次いで島根県43.2人、佐賀県38.4人、千葉県30.2人、神奈川県27.9人、埼玉県25.1人、福井県19.1人、福岡県16.3人が続いた(図6)。関東地方からの報告数が1,449人(69%)で最も多いが、近畿地方から240人(11%)、九州地方から164人(8%)、中部地方から113人(5%)、中国・四国地方から92人(4%)、北海道・東北地方から50人(2%)が報告された。報告がないのは青森県、高知県の2県である(図4,7)。

症状(重複あり)
多い順に発疹2,079人(99%)、発熱1,875人(89%)、リンパ節腫脹1,212人(57%)、結膜充血986人(47%)、咳522人(25%)、関節痛・関節炎495人(23%)、鼻汁456人(22%)、血小板減少性紫斑病6人(0.3%)、脳炎1人(0.05%)であった。その他として、咽頭痛37人、頭痛35人、倦怠感21人、下痢・水様便・軟便10人、硬口蓋/口蓋粘膜の点状出血8人、血小板減少4人、白血球減少3人、肝炎・肝機能障害3人、髄膜炎1人、肺炎1人等が報告された。発熱、発疹、リンパ節腫脹の3主徴すべてがそろって報告されたのは1,083人(51%)であった。

検査診断の方法(重複あり)
ウイルス分離22人(1%)、1Eが2人、2Bが2人であった。PCR法によるウイルス遺伝子の検出1,216人(58%)、この内474人については遺伝子型が検査されており、1Eが418人、2Bが30人であった。血清IgM抗体の検出は1,100人(52%)で、この内、ウイルス遺伝子と血清IgM抗体の両方が検出された者は371人(34%)であった。ペア血清による風疹抗体陽転または有意上昇は49人(2%)であった。

推定感染源
推定感染源は、2,108人中、特に記載がなかった者が1,578人(75%)と最も多く、不明・不詳・情報なしと記載された者が164人(8%)であった。また、何らかの記載があった男性281人の内、職場/会社の同僚/上司・職場/会社で流行・仕事等、「職場」と記載があった者が168人で最多で、この内18人は、職場内で流行あるいは複数名の発症が記載されていた。次に家族29人(父8人、妻5人、兄3人、母2人、子2人、姉2人、弟2人、妹2人、等)、友人・知人23人であった。何らかの記載があった女性85人の内、家族(夫11人、子10人、父4人、兄4人、母3人、妹3人、姉2人、弟1人、等)と記載があった者が43人で最多で、次に職場/会社の同僚/上司・職場/会社で流行等、「職場」と記載があった者が25人で、この内2人は、職場内で流行あるいは複数名の発症が記載されていた。友人・知人は8人であった。何らかの記載があった小児30人では、家族(父8人、母4人、兄4人、妹2人、姉1人)が19人と最も多く、次に友人・知人5人で、職場が2人であった。

職業
2018年1月から届出票に追加された職業記載欄では、会社員と記載されていた人が782人(37%)と最も多いが、配慮が必要な職種として医療関係者が28人(看護師8人、医療事務5人、薬局勤務4人、医師3人、看護助手2人、歯科医師1人、歯科助手1人、歯科医院勤務1人、検査技師1人、リハビリ職員1人、医療従事者1人)、保育士が13人、教職員が15人、警察官・警察署員が10人、消防士・消防署員が7人、自衛官・自衛隊員が7人報告された。

年齢・性別
報告患者の95%(1,993人)が成人で、男性が女性の3.8倍多い(男性1,670人、女性438人)(図8,9,10)。男性患者の年齢中央値は40歳(0〜76歳)で、特に30〜40代の男性に多く(男性全体の60%)(図8)、女性患者の年齢中央値は30歳(0〜70歳)で、特に妊娠出産年齢である20〜30代に多い(女性全体の64%)(図9)。

予防接種歴
予防接種歴は、なし(446人:21%)あるいは不明(1,469人:70%)が91%を占める(図8,9)。また、接種歴有り(193人:9%)と報告された者のうち、接種年月日、ロット番号ともに報告されたのは31人、接種年月日のみが報告されたのは33人、接種年月のみが報告されたのは1人、接種年のみが報告されたのは3人であった。接種年月日・ロット番号ともに不明が125人であった。

推定感染地域
推定感染地域は国内が1,635人(78%)と最も多く、国内・国外不明423人(20%)、国外39人(2%)、国内または国外11人(0.5%)で、国外での感染は少ないが、第8週以降ほぼ毎週報告された(図11)。

風疹HI抗体保有状況
風疹はワクチンによって予防可能な疾患である。今回報告を受けている風疹患者の中心は、過去にワクチンを受けておらず、風疹ウイルスに感染したことがない、抗体を保有していない集団である。予防接種法に基づいて、約5,000人規模で毎年調査が行われている感染症流行予測調査の2018年度の結果を見ると、成人男性は30代後半(抗体保有率(HI抗体価1:8以上):86%)、40代(同:79〜86%)、50代前半(同:77%)で抗体保有率が特に低い(図12、13,14、15)。2019年の風疹患者報告の中心もこの年齢層の成人男性であることから(図12)、この集団に対する対策が必要である。

一方、妊娠出産年齢の女性の抗体保有率(HI抗体価1:8以上)は概ね95%以上で高く維持されていたが(図15、16-2)、妊婦健診で抗体陰性(HI抗体価<1:8)あるいは低いと指摘される抗体価(HI抗体価1:8あるいは1:16)の割合は10代後半で32%、20代前半で27%、20代後半で22%、30代で14%、40代前半で11%、40代後半で16%であり、若年者ほどその割合が高い(図16-2)。以上のことから、特に妊娠20週頃までの妊婦の風疹ウイルス感染には注意が必要である。

風疹の予防接種制度と啓発
昭和52(1977)年8月〜平成7(1995)年3月までは中学生女子のみが定期接種の対象であった(図17)。平成元(1989)年4月〜平成5(1993)年4月までは、生後12か月以上72か月未満の男女幼児を対象に麻疹ワクチンの定期接種の際に、麻疹おたふくかぜ風疹混合(MMR)ワクチンを選択しても良いことになった。平成7(1995)年4月からは生後12か月以上90か月未満の男女(標準は生後12か月〜36か月以下)に変更になり、経過措置として12歳以上16歳未満の男女についても定期接種の対象とされた。平成13(2001)年11月7日〜平成15(2003)年9月30日までの期間に限って、昭和54(1979)年4月2日〜昭和62(1987)年10月1日生まれの男女はいつでも定期接種(経過措置分)として受けられる制度に変更になったが、接種率上昇には繋がらなかった。平成18(2006)年度から麻疹風疹混合(MR)ワクチンが定期接種に導入され、1歳と小学校入学前1年間の幼児(6歳になる年度)の2回接種となり、平成20(2008)〜平成24(2012)年度の時限措置として、中学1年生(13歳になる年度)および高校3年生相当年齢(18歳になる年度)の者を対象に、2回目の定期接種が原則MRワクチンで行われた。接種制度はあっても受けていない可能性がある。自分自身が受けているかどうかは接種の記録(母子健康手帳等)あるいは抗体検査で確認する必要がある。

これらのワクチン政策の結果、近年の風疹患者の中心は小児から成人へと変化している。妊娠20週頃までの女性が風疹ウイルスに感染すると、胎児にも風疹ウイルスが感染して、眼、耳、心臓に障害をもつ先天性風疹症候群の児が生まれる可能性がある。妊娠中は風疹含有ワクチンの接種は受けられず、受けた後は2か月間妊娠を避ける必要があることから、女性は妊娠前に2回の風疹含有ワクチンを受けておくこと、妊婦の周囲の者に対するワクチン接種を行うことが重要である。30〜50代の男性で風疹に罹ったことがなく、風疹含有ワクチンを受けていないか、あるいは接種歴が不明の場合は、早めにMRワクチンを受けておくことが奨められる。風疹の抗体検査、風疹含有ワクチン接種に対する費用助成をしている自治体が増加している。居住地の自治体のホームページ等を確認して、対象者に該当する場合は、風疹の抗体検査、風疹含有ワクチンの接種を積極的に受ける事が望ましい。

風疹第5期定期接種対象の昭和37(1962)年4月2日〜昭和54(1979)年4月1日生まれの男性は、積極的に風疹抗体検査を受け、検査結果に応じて予防接種を受けることが勧奨されている。対象者に対しては、市町村から受診券が送付されるが、まず1年目(2019年度)は、昭和47(1972)年4月2日〜昭和54(1979)年4月1日生まれの男性に受診券が送付される。なお、受診券が未送付であっても、市町村に希望すれば、受診券を発行し抗体検査を受検できる。風疹抗体検査・風疹第5期定期接種受託医療機関については厚生労働省のホームページ(「風しんの追加的対策について」) を参照のこと。風疹はワクチンで予防可能な感染症である。

<※本文に添付の図は、出典先のpdfをご覧ください>
▼出典 国立感染症研究所 感染症疫学センター 「風疹急増に関する緊急情報:2019年8月21日現在」2019年8月27日掲載

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